軍事パレードに臨む金正恩朝鮮労働党総書記(中央)。左はショイグ国防相、右は李鴻忠・共産党政治局員=平壌(朝鮮中央通信=共同)
軍事パレードに臨む金正恩朝鮮労働党総書記(中央)。左はショイグ国防相、右は李鴻忠・共産党政治局員=平壌(朝鮮中央通信=共同)

 東西冷戦の初期に起きた朝鮮戦争(1950~53年)の休戦協定締結から70年。北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記は中国とロシアの代表を招いて大規模な軍事パレードを開催し、朝中ロ3カ国の結束を内外に誇示した。

 北朝鮮は米国の脅威を理由に核兵器や大陸間弾道ミサイル(ICBM)を開発し、中国は台湾統一を掲げて軍拡を推進、ロシアは昨年来、ウクライナ侵攻を続ける。70年の間、ベトナム戦争、冷戦終結宣言、旧ソ連解体、中国の台頭などを経て世界は「新冷戦」と呼ばれる時代に入った。

 米欧日と中ロ朝などの軍事対立は大きな不安感をもたらしている。軍事力だけではなく、各国の外交力を通じた緊張緩和への努力が不可欠だ。朝鮮戦争の「終戦」に向け、世界とアジアの平和と安定を追求したい。

 戦後、日本の植民地支配が終わり、南北に分断された朝鮮半島で、武力での統一を目指した北朝鮮が韓国に侵攻した。韓国は米軍主体の国連軍、北朝鮮は中国義勇軍の支援を受けた。旧ソ連も北朝鮮を支持、戦火は朝鮮半島全土に広がり、民間人を含む多数が死傷した。

 休戦後、軍事境界線を挟んで韓国と北朝鮮の対立は続いた。2003~08年、北朝鮮の核問題解決を目指す米韓日と中朝ロの6カ国協議が行われた。米朝、日朝の関係正常化を目指したものの、北朝鮮の非核化の検証方法を巡る対立が解けず、中断された。

 その後、北朝鮮は核・ミサイルの開発を本格化させた。18年6月、金氏は当時のトランプ米大統領と初の米朝首脳会談を行った。しかし、翌年、北朝鮮は米国から全ての核放棄を求められ、協議は決裂した。

 金氏は再三のミサイル発射や軍事衛星打ち上げで、米国との対決姿勢を強めるが、国民に苦しい生活を強いながら軍拡を進めるべきではない。

 バイデン米政権は前提条件なしの協議を呼びかけながら、核兵器の搭載が可能な戦略原子力潜水艦を韓国に入港させるなど軍事的なけん制を行う。朝鮮半島の緊張緩和の鍵を握る米朝は、何よりも対話の再開に努めなければならない。

 ロシアのショイグ国防相と中国の李鴻忠・共産党政治局員が軍事パレードを観閲した。金氏はショイグ氏をより厚遇したという。李氏は軍との接点はなく、朝鮮半島に近い天津市など地方政府のトップを歴任した。中国は朝鮮半島の非核化を主張してきた。李氏の派遣は北朝鮮の軍事優先の戦略と一線を画す意思表示とも解釈できる。

 中国は6カ国協議では議長国として積極的に動いた。現在も朝ロに対して大きな影響力を持つ。6カ国協議のような多国間対話の枠組みの再構築も視野に入れて、朝鮮半島の緊張緩和に積極的に貢献するべきだ。

 23年版防衛白書は、中ロ軍の日本周辺の共同活動に「重大な懸念」を表明し、北朝鮮について「一層重大かつ差し迫った脅威」と記述した。

 松野博一官房長官は北朝鮮の核・ミサイル開発について「わが国と国際社会の平和と安定を脅かすもので容認できない」と述べ、北朝鮮の非核化に向けて国際社会と連携する考えを示した。

 日本は米国との同盟を強化し、軍事力を増強するだけでなく、米中韓などと協調しながら独自の外交力を発揮して朝鮮半島の緊張緩和の道を探りたい。