益田市出身のコンビで結成し、テンポのいい曲に合わせて漫才風に歌ネタを披露するお笑い芸人「メンバー」がSNSやYouTubeで人気を博している。吉本興業広島事務所「広島よしもと」に所属するコンビで、2018年に面白さと音楽性を競う「歌ネタ王決定戦」(毎日放送主催)で優勝し、一躍注目を浴びた。その後も歌ネタを中心としたYouTubeが高い再生回数を記録。先月30日には、プロのオーケストラと共演するという「前代未聞」の単独ライブに挑戦し、500人超のファンで埋まった客席は笑いの渦に包まれた。お笑い好きの記者がライブに参戦し、2人に話を聞いた。(Sデジ編集部・鹿島波子)

SNSでバズっている歌ネタ芸人のメンバー。左から山口提樹さん、潮圭太さん

 メンバーは、小学校から幼なじみの山口提樹さん(35)と潮圭太さん(35)で、高校の頃からコンビを組む。コントを主軸にやっていたが「もし漫才中に出囃子が鳴りやまなかったら・・・?」というネタを思いつき、歌ネタに挑戦することにした。中学時代のバンド経験などもあって、リズム感や発声のよさがハマり、2018年に初出場した「歌ネタ王」決勝では、あの「どぶろっく」など8組を押しのけ、出場1168組の中から頂点に立った。2020年からはYouTubeを始め、単語がループして終わらないのが癖になる歌ネタの「しりとり」が現在600万再生を記録するなどヒットし、テレビの情報番組にも出演した。

 今回のオーケストラとの共演は、「歌ネタ王」優勝後のインタビューで「オーケストラで歌ネタをやってみたい」と言ったことが発端。冗談半分だったが、ある日、2人が独自で配信するネットラジオ「メンバーの部屋ラジオ」に、神奈川県出身でプロファゴット奏者の興津諒さんから「実現できるかもしれません」と突如メールが届いた。メンバーのファンという興津さんは国内外のプロ奏者の招集や、歌ネタの全楽器のオーケストラ編曲まで全て担ってくれることになり、開催資金は2人がクラウドファンディングで調達。350万円を目標に募集すると、1149人から493万7000円が集まり、冗談が現実となった。

第三の「メンバー」として、プロオケ奏者の招集から編曲まで携わった興津諒さん(中央)

 お笑い界でも「前代未聞」の生オーケストラ演奏での歌ネタ。開催当日、会場の広島・JMSアステールプラザ中ホールには、遠くは東北地方など全国各地からファン550人が集結し、オンラインでも450人がリアルタイムで参加した。舞台では30人の国内外のプロ奏者がスタンバイ。幕が開くとオーケストラの荘厳なクラシックの名曲が演奏され、決めの音に合わせて2人の名前が大画面に表示された。一呼吸置いて鳴り始めた鉄琴の音が、歌ネタ王優勝時に披露した歌ネタ「俺の顔を見ろ」のイントロ。格調高いオーケストラの調べとのギャップに客席はどっと沸き、袖から登場した2人を大きな拍手で出迎えた。

新ネタ「勇者ウシオスの偽物」で殺陣を見せるメンバー

 つかみに成功すると、ライブは盛況に進んだ。披露した歌ネタは、当初1月末までに編曲を終える予定だったが、...