特殊詐欺犯人グループとみられる人物の実音声
特殊詐欺犯人グループとみられる人物の実音声
特殊詐欺犯人グループとみられる人物の実音声

 特殊詐欺の被害を防ごうと、出雲署が高齢女性宅にかかってきた犯人グループとみられる人物の実際の音声を公開した。女性が警察の「だまされたふり」作戦に協力して録音したもので、出雲署は生々しい会話を通して犯行手口を知ってもらい、不審な電話に注意してほしいと呼び掛ける。 (井上雅子)

 

 出雲市内の70代女性宅の固定電話が鳴ったのは8月。県防犯協会の職員だと偽った男が「あなたの個人情報が漏れた」という話を切り出した。

 翌日、販売会社の社員を装った別の男から電話があり「あなたは放射能測定器を買える権利がある」と説明。購入を断る女性に〝お客さま番号〟を告げた。

 続いて電話してきたのは環境保護団体の代表を称する男。「あなたがいらないならお客さま番号を教えてほしい。福島のこどもたちが待っている」と伝え、お客さま番号を聞き出した。

 ここまでは丁寧な口調のやりとりが続いたが、4人目から態度が一変した。

 弁護士を名乗る男は女性に対し、他人にお客さま番号を伝えたことが法令違反になると説明。「刑事処罰を受けなければいけなくなる」「刑務所で罪を償うことになる」とどう喝し、解決金として500万円を支払うよう執念深く求めた。

 出雲署によると、役割分担した複数の人物が登場する「劇場型」と呼ばれ、10年前の東日本大震災後に流行した手口という。女性は1人目の電話の内容を不審に思い、警察に相談したことで被害を免れた。

 一方、犯行グループは女性が送金を拒んだ後も再び優しい口調で電話をかけ、コンビニエンスストアで電子マネーを購入するよう指示。店員には孫の誕生日プレゼントだと答えるよう助言する徹底ぶりだった。

 音声はこのほど出雲市佐田町であった防犯講習会で初めて使われた。同署生活安全課の吾郷利孝課長は「自分が被害に遭うはずはないと思わず、不審なことがあればすぐに相談してほしい」と強調。音声は県内各地で活用するという。