スアレス  ネイマール  バルセロナ  メッシ  加藤未央  我思う、ゆえに我あり 
2015年06月25日

副編集長・加藤未央のコラム
『パンツを右足から穿くように』
「我思う、ゆえに我あり」

副編集長・加藤未央が自ら筆を取る本コラム、その名も『パンツを右足から穿くように』。夏の夜長はついつい物思いにふけってしまうもの。加藤未央もまた、「フットボールとはなんぞや」という壮大なテーマの答え探しに夜な夜な挑んでいる。結局、答えとは自分の中に見出すものなのだが、そうやって考えることこそ意味があることなんだと、思い至るわけである。

text by Mio KATO

文=加藤未央

 ずいぶんと暖かくなってきた。じきに梅雨が明けて、蝉が鳴き始めるだろう。

 夏の夜が、好きだ。
 もっと言うと、夏の夜が持つ開放感と、少しいけない雰囲気が好きだ。
 別に悪いことをしている訳じゃなくても、夏の夜は少しだけ自分が不良になったようなスリルを不意に味わえる。昔、おじいちゃんが飲んでいたビールの泡に小指を突っ込んでなめてみた時のような、そんな感じに似ている。

 6月に入って、ヨーロッパのサッカーは一つの区切りを迎えた。国内リーグ戦、カップ戦、UEFAヨーロッパリーグ、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)。シーズンを通してこれだけの真剣勝負を戦い抜いてきたチームは、シーズンが終わってもなお息つく間もなく4年に一度の大会コパ・アメリカ、そしてユーロ予選へと突入している。

 14/15シーズンのCLで最も注目を浴びたのはバルセロナの前線の3人、メッシ、スアレス、ネイマールだろう。彼らなしにこのシーズンのCLは語れない。ペップ・グアルディオラ政権下ではポゼッションサッカーの象徴といわれていたバルセロナが、ルイス・エンリケ監督になってからは別の違ったバルセロナのサッカーの形を確立したように思う。前者はポゼッション率を上げることによって試合を支配し、後者は縦へのパス、前線からの素早いプレス、そしてカウンターを使いこなして相手を凌駕するスタイルをとる。メッシの役割もさらにステップアップしたように感じるシーズンだった。

 世界最高のポゼッションサッカーといわれた時もビッグイヤーを掲げ、バルサらしさに新たなオプションが加わったこのシーズンもまた、ビッグイヤーを掲げた。世界最高のサッカーは変化を続け、また新しい形になって世界を驚かし魅了する。

 「“良いもの”には答えがない」。そう思った。
 世界一面白いサッカーでさえ刻々と変わっていくこの世の中で、「フットボールの魅力とは何か」を語る時、実はその答えもまた変化していくものなんじゃないかと思った。

 サッカーのメデイアに携わる人との会話の中で、「どうやったらサッカーの人気が日本で根付くのか」という話題になることが多い。最近、かつてTBSのスーパーサッカーという番組で一緒にやらせてもらっていた加藤浩次さんとお会いする機会があり、その話題になった。少しの間、話をさせてもらったけれど、結局答えは出てこなかった。それでも加藤さんはスーパーサッカーという番組を通して14年間サッカーの魅力を伝え続けてきている。その功績は間違いなく大きい。それと一緒になんてとてもできないものだけれど、私もいろいろな形でサッカーやフットサルに関わらせてもらっていて、その都度どうやったら魅力が伝わるかなといまだ少ない頭の中の引き出しからあれこれ探ってみている。

 ただ、答えが見付からない中で唯一言えることは、サッカーを伝えようという想いの中には確かにサッカーが存在している、ということ。こんな感じのことを言ったフランスの哲学者がいたな……。
 そう、「我思う、ゆえに我あり」だ。

 夏の夜に、答えを探さないで“フットボールを感じる機会”をぜひ作ってみてはいかがだろうか。その時感じたものが、きっとその時の答えなんだと思う。





加藤未央(かとう・みお)

1984年1月19日生まれ、神奈川県出身。 2001年に「ミスマガジン」でグランプリを獲得し、05年には芸能人女子フットサルチームにも所属。07年から09年まで「スーパーサッカー」(TBS)、09年から15年まで「スカパー!」 のサッカー情報番組「UEFA Champions League Highlight」のアシスタントを務め、Jリーグや海外サッカーへの知識を深めた。現在は、ラジオ番組「宮澤ミシェル・サッカー倶楽部」などにも出演し、フットサル専門誌「フットサルナビ」でも連載中。15年4月からオフィシャルブログ「みお線」もスタートした。http://ameblo.jp/mio-ka10/

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