Motley Crue at a studio photoshoot in Tokyo, Japan, way, way back in July, 1985.
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ファッション

ヘヴィメタルファッションの歴史

1980年代スラッシュメタルの普段着からブラックメタルのコープス・ペイントまで、ヘヴィメタルの歴史を彩ってきたファッションを簡単に振り返っていく。
Written by Sammy Lee
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音楽批評家たちは年1回ペースで「ロックは死んだ」と嘆いているが、ヘヴィメタルは一度も死ぬことなく生き続けている。今から約50年前にBlack Sabbathなどと共にこの世に生まれたヘヴィメタルは、姿形を変えながら今も進化を続けており、スタジアムやフェスティバルをソールドアウトにしている。このジャンルがその歩みを止めることはこれからもないだろう。しかし、このジャンルのファッショントレンドは一定の周期で一新されている。デビルホーンの数よりも遥かに多くのサブジャンルが存在するヘヴィメタルシーンは、いくつかの素晴らしいファッションスタイル(そうとは言えないものもある)を生み出してきた。ヘヴィメタルファッションの歴史を簡単に振り返っていこう。

スラッシュメタル

クラシックなヘヴィメタルファッションと言えばこれだ。MatallicaAnthraxSlayerMegadethなどをショッピングモールの駐車場に止めた車の中で爆音で鳴らしていたファンから、彼らの音楽をひたすらコピーをしていたガレージバンドまで、1980年代初頭のメタルヘッズ全員がこのファッションを好んでいた。ヘヴィメタルも一世を風靡したパンクロックと同じく、バンドとファンの間にファッションの差は存在しなかった。また、このファッションは動きやすく、エナジー溢れる演奏に非常に適していた。ストレートの超ロングヘアや肩までのパーマヘア、ベスト、Tシャツ、スキニージーンズ、スタッドベルト、バスケットボールシューズ、バンド名のワッペンがところ狭しと貼られたクラシックなバトルジャケット(デニム&ノースリーブ)などは、 超高速ヘッドバンギング人生を送るための必需品だった。このクラシックスタイルは余りにも印象的だったため、最近のヒップスターたちがこぞって真似ている。
After heavy metal had cemented itself as one of the main offshoots of rock, the sound – and its fashion – began to mutate. Thrash metal was an early metal sub-genre.

スラッシュメタル

© John Smisson

ヘアメタル

1970年代の中性的なグラムロックファッションに触発されたMötley CrüePoisonTwisted SisterGuns N' Roses などに代表される1980年代のヘアメタルバンドが好んでいたファッションは、他のヘヴィメタルファッションとは一線を画している。欲望渦巻くロサンゼルス・サンセットストリップから生まれたヘアメタルバンドたちはケバケバしいファッション(モニターに足を乗せて "ロックゴッド" を演じる彼らには相応しいものだった)を求めており、激しく逆立てた巨大な髪、ピタピタのスパンデックスパンツ、レザーチャップス、バンダナ、レザーグローブ、もはや意味不明なゴテゴテのシューズ、猥雑なアニマルプリントなどでその欲望を満たしていた。有り難いことにこの貴重なファッションは今もたまに "再臨" する。
Hair metal, glam metal, lingerie metal – they're all one and the same thing. Big, brash, sleazy and out of control. Metal in the '80s was dominated by it.

ヘアメタル

© John Smisson

コスチュームメタル

ヘヴィメタルは、奇抜なコスチュームが積極的に支持される希少な音楽ジャンルのひとつだ。KISSAlice Cooperはヘアメタルバンドに大きな影響を与えた存在だったが、彼らは奇妙な出で立ちと共にステージ上で別人を演じるアーティストの先駆けでもあった。しかし、1980年代中盤にヴァージニア州リッチモンド出身のGWARがSF映画に登場する異星人のような姿で男性器のような巨大な物体から謎の人工体液を噴射し始めた時、コスチュームメタルのコンセプトはネクストレベルへ進化した。1990年代に入ると、ホラー映画殺人鬼のようなマスクをかぶったSlipknotMushroomheadが登場し、2000年代には、悪魔枢機卿のような姿をしたPapa Emeritus IIIが率いるスウェーデンのバンドGhostが登場した。
Think Slipknot, GWAR and Sunn O))). Metal bands who take to the stage in terrifying get-ups.

コスチュームメタル

© John Smisson

ニューメタル

ニューメタルは、Limp BizkitKornLinkin ParkGodsmackStaindDisturbedなど(Deftonesはニューメタルに入れるにはもったいないほど素晴らしいバンドなので除外する)が広めた、スラッシュメタルとスピードメタルにポップ、ファンク、ラップを組み込んだ不届きなジャンルだった。1990年代後半の数年間、ニューメタルバンドたちは運動神経や体格の良さだけを理由に高圧的な態度に出ていたあの男子学生のように世界を闊歩した。ニューメタルのサウンドは評論家やミュージシャンの間では賛否両論で決してポジティブな存在ではないが、ポップ志向の強いハードロックバンドの中に今もその影響を垣間見ることができる。しかし、ジムでのワークアウトと夏休みに調子こくことだけを考えている輩の部屋着に最適なそのファッションは、誰にも愛されていない。それでも、このファッションをリバイバルさせたいというのなら、クォータースリーブジーンズとノースリーブを着込み、顎髭を生やして、財布にチェーンをつければ完成だ。
Much maligned and misunderstood, late '90s nu metal was inescapable – and it had a look to go with it that was equal parts skater, frat boy and punk-rocker.

ニューメタル

© John Smisson

ブラックメタル

ブラックメタルは長年に渡り議論の的になってきた。このジャンルのひたすらダークなサウンドと厭世的な美学は、平凡なデスメタルバンドと保守的なカルチャーへのカウンターとしてノルウェーで生まれた。このサブジャンルに組み込まれるバンドの中には、ここでは書けないほど凶悪な犯罪に関わった人物もいるが、MayhemDarkthroneDimmu Borgirのようなバンドが打ち出す強烈な怒りは、リスナーに新鮮なカタルシスと不安感をもたらしてくれる。また、彼らは、神秘的な文字が刻まれたガントレットや禍々しいスパイク、逆十字、ペンタグラム、『マイティ・ソー』のハンマー、コープス・ペイントなどに拘りながら、ヘヴィメタルファッションに再び "ブラック" を持ち込んだ。
The scariest and most full-on of all the metal fashions can be found worn by black metal bands. Think corpse paint, painful looking piercings, spikes and pagan symbols.

ブラックメタル

© John Smisson