ザクロは、中東や地中海地域が原産の果物であり、古くから食用や薬としての価値がありました。それは、ザクロが持つ豊富なポリフェノールに含まれる抗酸化力・抗炎症作用によるものです。
ザクロの効果
ザクロの果皮、葉、根、樹脂、果実から得られる果汁や抽出物は、抗酸化や抗炎症以外にも多くの健康効果がある事で知られています。
例えば、
抗糖化活性、糖尿病、抗血小板活性、心血管の健康、高血圧の予防、抗菌、抗腫瘍効果、更年期障害の改善、美肌や記憶力の改善などです。これらの効果はさまざまな試験によって示されており、研究の対象とされています。
手軽に飲めるザクロジュースにおいても、その抗酸化力により、悪玉コレステロールの酸化を抑制する事につながる事が確認されています。その結果、動脈壁へのLDL(悪玉コレステロール)の沈着の予防につながる為、抗アテローム形成効果が期待でき、血管の疾病から生じる、さまざまな病気の予防に期待が持たれています。
ザクロ果皮ポリフェノールと腸内細菌
ザクロ果皮ポリフェノールには抗酸化作用や抗動脈硬化作用、抗肥満作用などの効果が確認されています。
他にも、腸内細菌のバランスを良好に保つ効果や、消化をサポートする細菌の活性化、短鎖脂肪酸の生成を促進するなどの作用なども確認されています。
マウス実験によると、健康に良いとされる腸内細菌「ラクトバチルス」の増殖が確認され、この事が中枢神経系の炎症や神経被膜の損失も防ぐ事につながるとされています。
腸内細菌の多様性がない場合、食品に含まれる栄養素を腸内細菌で代謝する事が難しくなる為、日頃からの腸内環境を気にする事も重要です。
腸内細菌のバランスがよくないと、ザクロ果皮ポリフェノールを摂取しても、体内では分解・代謝されない事が確認されています。
このように、腸内環境の改善には時間もかかる事も考えられますので、第二の脳である腸内環境を意識した、自分にあう腸活ケアが大切だと考えられます。
ザクロ種子油による生殖能力向上や脂肪酸生成抑制効果
ザクロ種子抽出物には、特有の脂肪酸(プニカ酸)が豊富に含まれており、これら脂肪酸には、抗酸化、抗炎症、抗腫瘍活性が確認されています。そして、下記参考文献では生殖機能に及ぼす影響についての研究が報告されています。
具体的には、ザクロの種子から抽出されるエキスを使った、ラットの受精能力の向上についての研究です。
ラットを使ったこの試験によると、ザクロ種子油を摂取したラットにおいて、卵の受精率、受精卵の発育という指標において明らかな向上が確認されました。
人による臨床試験ではないものの、ザクロ種子油が哺乳類の生殖能力において、良い影響が見られる可能性が示唆された貴重な研究の1つであると考えられます。
また、他にもザクロ種子油を与えたラットによる脂肪酸の生成抑制に関する試験が行われたものもあります。
このラットによる試験では、体の脂肪や血中の脂質量には変化が見られませんでしたが、肝臓の脂肪の蓄積が減少する事が確認されています。
他にも、血中の特定の脂肪酸の量が減少する事もみられ、これらにより、特定の脂質ではあるものの、ザクロ種子油による脂肪酸の生成抑制効果を示唆する事につながりました。
出典:Nikseresht, M., Fallahzadeh, A. R., Toori, M. A., & Mahmoudi, R. (2015). Effects of Pomegranate Seed Oil on the Fertilization Potency of Rat's Sperm. J Clin Diagn Res, 9(12), FF01-4.
ザクロに期待されるがん治療について
現代のがん治療薬は高額で、副作用も懸念されるため、ザクロを始めとした天然成分を使用した治療へのアプローチは、経済的で安全性の面でも注目されています。
下記参考文献によると、ザクロに期待できる癌治療についての意見が述べられていますのでご紹介します。
まず、ザクロには「エラジタンニン」や「プニカラギン」というポリフェノールが含まれています。
これらは、体内の「活性酸素」を除去することで、強力な抗酸化効果を示すとともに、炎症の抑制効果も持つことが分かっています。
in vitro試験(試験管内での研究)とin vivo試験(生体内での試験)において、これらザクロが持つポリフェノールの効果「抗酸化作用と抗炎症作用」が細胞遺伝子の調整や、癌の転移能力の制限に関して、主要な抗変異原性および抗増殖作用を有する事が示されました。
これは、ザクロポリフェノールが癌の成長を制限する効果を持つ事を示唆するものです。
特に、ザクロ成分は、結腸や前立腺がんへの効果が高い事がわかり、多くの関心を集めています。
まだまだ、更なる臨床研究は必要とされているものの、その進展とその結果には、大きな期待が寄せられています。
参考文献 Hussein, L., Gouda, M., & Buttar, H. S. (2021). Pomegranate, its Components, and Modern Deliverable Formulations as Potential Botanicals in the Prevention and Treatment of Various Cancers. Curr Drug Deliv, 18(10), 1391-1405. さまざまな癌の予防と治療においてその可能性のある植物「ザクロ」の最新の製剤処方
ザクロの果皮には毒性(副作用)がある
ザクロの果実その1粒1粒には種子が含まれています。副作用として一部の方にはアレルギー症状が出る場合はあるものの、基本的には豊富な栄養素をもった果実・種子は、酸味がありますが美味しく食べられます。
ただし、ザクロの根や実の外側を覆う皮の部分には、ザクロ自身がその実を外的から守るために作り出したアルカロイドの一種である猛毒「ペレチエリン」が含まれています。
※アルカロイドとは、草食動物から植物自身を守るために作り出した苦味成分であり、外敵からの防御メカニズムとして備わっている機能です。
まるごと、そのまま、かぶりついたり、皮ごと食べたりすると食中毒を起こす事になります。
下痢や吐き気は当然ですが、中枢神経に異常が生じ、めまいや、たちくらみも発生し、まともな状態ではいられなくなります。
ザクロの果皮に含まれる猛毒が完全に体外に抜けるまでは、この症状は続きます。そのため、絶対にザクロの皮は食べないようにしてください。
ザクロの果皮はそのまま食べる事は出来ないものの、薬用としての効果はあります。
動物や人に感染する条虫駆除に使われたりします。
例えば、ダニを介して動物に寄生する小型の原虫「ピロプラズマ寄生虫」などの増殖抑制効果なども研究されています。このように、食用としては使えないザクロの皮も、有効な使い道があるのです。これがザクロの素晴らしいところですね。
参考文献
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●Lu, X.-Y., Han, B., Deng, X., Deng, S.-Y., Zhang, Y.-Y., Shen, P.-X., Hui, T., Chen, R.-H., Li, X., & Zhang, Y. (2020). Pomegranate peel extract ameliorates the severity of experimental autoimmune encephalomyelitis via modulation of gut microbiota. Gut Microbes, 12(1), 1857515.
●Hussein, L., Gouda, M., & Buttar, H. S. (2021). Pomegranate, its Components, and Modern Deliverable Formulations as Potential Botanicals in the Prevention and Treatment of Various Cancers. Curr Drug Deliv, 18(10), 1391-1405.
●Eltaysh, R., Rizk, M. A., Elmishmishy, B., El-Sayed, S. A. E.-S., Abouelnasr, K., & Igarashi, I. (2022). Pomegranate (Punica granatum) Peel Inhibits the In Vitro and In Vivo Growth of Piroplasm Parasites. J Parasitol Res, 2022, 8574541.
●Arao, K., Wang, Y.-M., Inoue, N., Hirata, J., Cha, J.-Y., Nagao, K., & Yanagita, T. (2004). Dietary effect of pomegranate seed oil rich in 9cis, 11trans, 13cis conjugated linolenic acid on lipid metabolism in obese, hyperlipidemic OLETF rats. Lipids Health Dis, 3, 24.
著者:大名町スキンクリニック 院長 橋本 慎太郎
金沢大学医学部卒、美容皮膚科クリニックを運営
https://m-beauty.jp/about/dr.html
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本成分は、疾病の診断、治療、予防を目的としたものではありません。疾病に罹患している場合はかかりつけ医師に、医薬品を服用している場合は医師、薬剤師に相談してください。食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスをお勧めします。