ユー・エス・エス 中古車流通市場、オートオークションにDXを

1980年、国内初の中古車オークション企業として設立したユー・エス・エス(以下USS)は、独自のコンピュータポスシステムをはじめ、中古車流通市場に次々と革新を生み出してきたオートオークションの革命児だ。その歴史と今後の展望を瀬田大社長に聞いた。

瀬田 大(ユー・エス・エス 代表取締役社長兼最高執行責任者〔COO〕)

独自のポスシステムを開発

1982年に愛知県東海市に常設オークション会場を開設し、オートオークション事業を開始したUSS。当時、手ゼリが主流だった業界に先駆け、コンピュータ制御による独自の「ポスシステム」を導入し、公正かつ透明性の高いオークションの運営を実現した。

USS社長の瀬田大氏は創業者より聞いた話として「手ゼリは忖度の多い世界で不公平なマーケットになりがちだが、その点、コンピューターシステムを使えば、手ゼリで起こる声の大小や、『手を出すな』といった横やりもなく、一番高く価格を提示した人に買う権利が与えられる公正公平なオークションを行うことができる。これが特に若い業者に好評で、それまで手ゼリのオークションに頼っていた人たちの注目を一気に集めた」と話す。

開業から今年で39年。オークション会場は全国19カ所に広がり、技術革新もどんどん進んでいる。現在、東京会場では同時12レーン、名古屋会場では、同時10レーンのセリシステムを導入。1日に1万台以上の車をセリにかけることが可能で、1台当たりの平均セリ時間はわずか20秒と、スピード感のあるオークションを展開している。

USSは全国19カ所にオートオークション会場を持ち、業界No.1のシェアを誇る

さらに、全国どこからでも落札できる外部落札システムとして、衛星TV回線を活用した「USS JAPAN」、インターネットを活用した「CIS情報サービス」を開発。オートオークション市場で業界№1の市場シェア(37.7%、2020年)を獲得する、中古車流通市場のリーディングカンパニーとして成長を遂げている。

公正公平な車両の評価が重要

公正公平なオークションを運営するというのが、USS創設からの変わらぬ想いだ。「中古車市場は、年間700万台以上が流通し、2.5兆円に達します。こうした大きな市場で流通を担うことに大きな責任を感じています」

公正公平な運営には、セリシステムだけでなく、公正公平な車の評価が重要となる。USSでは、オークションへの出品車両は、車種、年式、排気量などに関わらず、1台1台細やかに入念に検査する。独自の10段階の評価基準を定め、1台ごとに評価点をつけ、会員はこの評価点を参考にUSSのオークションに参加する。

公正公平な評価のために1台1台細やかに検査

また、名古屋会場と東京会場にイスラエルのUveye Ltd.が開発した車両の下部とタイヤ・ホイールの撮影システムを導入。同システムは、車両下部・外観(ボデー、タイヤ・ホイール)の高度3Dスキャン撮影とAIによる画像解析の2つを組み合わせることで、瞬時に車両のキズや凹みなどを検知することができる。

「現在は画像撮影だけですが、将来的には、画像解析による不具合をAIに学習させ、不具合を自動的に検出し、検査の迅速化と公正化に繋げていきたいですね」

また、出品票のデジタル化への取り組みにも力を入れる。これまで、オークションへ出品する時、会員は、紙の出品票に車両情報を記載し、USS検査員が検査内容を追記していた。しかし手書きでは、記載ミスや読みづらいといった課題があるほか、データとしての蓄積も難しい。デジタル出品票を導入することで、会員が車検証のQRコードを読み込み、デジタル化した車両情報をUSSへ送る。車両情報はUSS検査タブレットに反映され、検査員は検査結果をタブレットに入力できるようになる。

出品票を紙からデジタルに移行させるなど、オークションのDXに取り組む

「事業開始から39年間、紙で行ってきた出品票のデジタル化は、会員の利便性向上やオークション業務の効率化を実現するだけでなく、中古車のビッグデータの今後の活用にも繋がっていくかと思います」

リサイクル事業、DXに注力

コロナ禍においても国内の中古車需要は底堅く、出品・成約台数は、ここ数年はキープできると予想される。2025年以降にはEVなどの次世代型自動車の普及が進むとみられ、車の買い替えに伴い中古車が増加することで、オークションへの出品増加が期待される。「今は、検査の質を高めながら、将来に向けた代替え需要に向けて、より公正公平なオークションサービスを展開できるよう、足固めをしていきたいと思います」

海外への展開に関しては、子会社がこの夏からマニラでオークションを開始するべく準備を進めていたが、コロナ禍で足踏み状態だという。「海外展開については、国ごとにタッグを組む相手を見ながら、慎重に進めていきたいと考えています」

USSでは、オートオークション事業をメインに、中古車買取販売事業も行う。良質の中古車を確保するため、グループ独自の中古車買取チェーン「ラビット」を全国に展開。エンドユーザーから買い取った中古車はオークションに出品するほか、一部小売りも行う。

中古車買取チェーン「ラビット」を全国展開

また、リサイクル事業にも10数年来、力を入れてきた。子会社であるアビツの自動車リサイクル事業では、廃自動車から発生する鉄、アルミ、銅やレアメタルを含む金属類、プラスチックなどを高い精度で分別・再資源化。年間約1.5万台の廃自動車を扱っており、重量比で97%のリサイクル率を実現している。

子会社で年間約2万台の廃自動車リサイクルを実施

2019年4月には、アビツとSMFLみらいパートナーズが合同で新会社SMARTを設立し、設備・プラント処分の元請業務を開始。アビツの培ってきた解体撤去工事の技術と各金属及びプラスチックなどの再資源化、資源販売ネットワークを活かし、資源循環へ貢献していく。

今後に向けては、DXへの取り組みに力を入れていく。

「これまでアナログだったものをデジタル化していくことで得た車両情報のビッグデータを、多面的に活用していきたいです。ユーザーが実際に使用した後の車両データがここまで多く集まる所はないはず。そうした履歴のある車の情報をデータ化することで、メーカーや部品会社、保険会社などに活用していただければと考えています」

 

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