社団法人 日本映画テレビプロデューサー協会 会報 2009年9月号

「世界に見せたいドラマがある」
~今年の国際ドラマフェスティバル中間報告~

日本映画テレビプロデューサー協会 副会長 重村 一  (ニッポン放送)

日本映画テレビ プロデューサー協会 副会長 重村 一 (ニッポン放送) 最初は高い志と強い意思を持って事を始めるのだが、回を重ねるごとにその意気込みは、何処に消えたのかと思いたくなるほど熱が冷めてくるのは“ものの常”とも言える。 この「国際ドラマフェスティバル」も3回目になる、しかしプロデューサー協会の会員の手厚い支援と無私の協力もあって、お蔭様でそのような心配はなさそうである。 「日本のテレビドラマの海外発信をより促進し、停滞気味の海外市場開拓に風穴を開けて道筋をつける」というのが、このイベントの趣旨であった。 第一回は時間も予算もなく、キックオフ的意味合いの強いものであったが、それでも韓国、中国、タイなどアジアのドラマイベントと協力関係を作り、制作者、俳優を招待、各国の優秀作品を上映、お互いの番組交流、連携を積極的に進めるということで合意し、将来への素地固めを行なう事が出来た。 第二回の昨年は、音事協、クプラなど権利者団体も参加し、『作品の質』を問うだけでなく、「市場性」『商業性』をも重視する、他のコンテストとは一味違った審査基準を持つ“東京ドラマアウォード”を創設。グランプリにはWOWOWの「パンドラ」が選ばれた。この作品に高い評価が集まったことで、このアウォードの意味づけが明らかになったと思っている。 早速、「パンドラ」はこれまで日本の作品が放送される機会の少なかったヴェトナムの国営テレビが、この7月全シリーズを放送、早々と成果が出たと考えている。 また、今年6月に開催された“上海テレビ祭”では、今回から「アジアドラマ交流賞」が日本、韓国の優秀ドラマを対象に新設され、日本の5本の作品を選考、その結果、TBSの『アラウンド40』が受賞した。この作品も後日、中国での放映が検討されている。 まずは、アジアで恒常的に日本のドラマの放送枠を確保し、更に中東、欧米へとこの流れを広めて行けたらと考える。 これまで、各局や制作会社の番組販売担当者が、血の滲むような苦労を重ねてきたが、いかんせん孤立無援の状態であったと聞く。制作サイドが彼らの援軍となって、業界上げての機運を作り出す事が大事であろう。 さて、今年もプロデューサー協会の選考による第一次審査、新聞記者、海外番販担当者等による選考委員会を経て、9月には前年同様、岸惠子さんを委員長とする最終審査会が開かれ『東京アウォード』の受賞作が決まる。特に今年からは日本を良く知る外国人審査委員を2名に増やし、より海外の視聴者目線が反映される選考が行なわれるようにした。このようにアウォードの審査は順調に進んでいるが、一方今年アジア各国との話し合いは更に新しい展開を見せており、今回はインド、マレーシアの作品も海外部門に登場する。 相互理解が進んだ一つの現われだろうが、今年からは先方の国のグランプリ作品をそのまま招待するのではなく、各国が自国の3~4の作品を選び、日本側でわが国の視聴者に理解されるであろう作品を選び、招待作品とすることが出来た。 今後、この選考にプロデューサー協会の方々にご協力をお願いする事も出てくると思われる。 また、国内の地方局にも参加意識を強めてもらう為、今年から地方局制作の作品だけの賞も設けた。これは民放に限らず、NHKの地方制作で全国ネットに乗らなかった作品も含める事としている。 いずれにしろ、国内の視聴率だけが物差しという枷から抜け出し、作品力で海外を含めた市場で自らの商品としてのドラマを評価してもらおうという気風が日本の制作人の中に生まれる環境づくりの為に、この「国際ドラマフェスティバル」が一助になれば良いと期待している。10月19日、20日は是非、ご参加下さい。

新理事より会員の皆様への御挨拶

TBSテレビ  ドラマ制作センター 貴島 誠一郎

TBSテレビ ドラマ制作センター 貴島 誠一郎  ドラマの制作現場に来た日から、20年が経とうとしている。まさか自分がプロデューサーをやることになるとは、学生時代も入社した時も想像だにしなかった。予定になかった人生で20年も続けられたのは、ドラマ現場で出会った秀れた先輩たちの、心に残る言葉に接したからだと思う。 『テレビのドラマは、優しい人間でなければ作ってはいけません。君にはその資格があると思います』金八先生のプロデューサーである柳井さんに、年賀状に書いていただいた言葉だ。優柔不断な私に、人に対する優しい眼差しや性善説にたったドラマ作りをするという目標ができた。 『映像制作よりも面白い趣味はない。仕事が趣味だと言って恥しくないのは、この職業だけなんだよ』キティフィルムの多賀さんは多くのヒット作を作り、幅広い趣味を持たれている魅力的な先輩だ。引出しの狭い自分に悩んでいた時、目から鱗が落ちた。 『ハリウッド映画は七つのパターンしかない。パターンを外した作品は、良作になってもヒット作にはならない』映画評論家の白井さんの言葉だ。確かに、ドラマに完全なオリジナルはない。それは人間の営みを描く普遍であるからだ。先進的な作品は、多くの人に理解不能なものである。それで客が悪いと言うなら、作らなければ良い。 現在の私には、後輩たちに伝える言葉を持っているだろうか? いや、そういう先輩たちの言葉を後輩たちに伝える役回りがある。そして後輩たちの後押しをしてあげることだ。 皆様、よろしくお願い致します。


日活 企画製作本部 企画製作部  谷口 公浩

日活 企画製作本部 企画製作部 谷口 公浩 幼い頃から映画が好きでした。映画好きの血は、東映のチャンバラ時代劇が大好きだった今は亡き父のものであり、洋画好きの姉、兄の影響も大きいものがありました。小学生の頃は近所の小さな映画館で東宝のゴジラ、大映のガメラに熱中しながらも、時として併映の若大将やお化け映画のほうが面白かった記憶があります。感動した初めての映画は「サウンド・オブ・ミュージック」で、当時、出身地の名古屋でも一・二を争う「中日シネラマ劇場」というロードショー館の大スクリーンにいきなり展開されたアルプスの景色に圧倒され興奮した記憶は今も鮮やかです。吉沢京子さんのスコート姿にどきどきしたのもこの頃です。中学・高校と進むにつれ、いつのころからか、将来は映画にかかわる仕事をしたい、と何となくでしたが思うようになっていました。そして、映画をやるなら東京だと勝手に思い込み、映画専攻のある大学に進学するため上京し、フィルムセンターの小津安二郎監督作品特集や、文芸坐の5本立てオールナイトに通いつめる映画三昧の日々の中、卒業間近にようやく就職が決まり、あっという間に今日を迎えた次第です。ただの映画好きな少年だった私が、今こうしているとは想像だにしておりませんでした。 良い映画とは何か。私はこのことについて出来の悪い頭を悩ませます。きっと、あと何十年たっても、私は答えを導くことはできないだろうと思います。それでも、映画の道を志すきっかけになった数々の映画は、私にとって良い映画であったことは間違いありません。それらを反芻しながら、少しでも答えに近いところに歩み寄って行ければと思います。 未曾有の不況といわれ、将来に明るい兆しがなかなか見えない昨今ですが、これから精一杯頑張っていきたいと思いますので、宜しくお願い致します。

只今撮影中

テレビ朝日 編成制作局 制作2部 プロデューサー 島川 博篤
テレビ朝日 編成制作局 制作2部 プロデューサー 島川 博篤 「メイド刑事(デカ)」

  5月末にクランクインした「メイド刑事」。毎週金曜23時15分からの金曜ナイトドラマ枠を東映京都撮影所で撮影するのは初めてになります。新たなシリーズを定着させるべくキャスト・スタッフ一同、意気込んでおります。このドラマは、大人から子供まで幅広く楽しめる作品世界を目指し、只今撮影中です。 主演は福田沙紀さん。民放での連ドラ初主演です。共演は、原田龍二さん、的場浩司さん、大島蓉子さん、品川徹さんと個性派揃い。ストーリーは、警察が捜査できない京都の豪邸にメイドとして潜入し、覗き見や立ち聞き、秘技を駆使して機密情報を入手し、世の悪を叩きのめす痛快アクションエンターテインメントです。 まず、メイド服の衣装選びですが、メイド喫茶風も考えましたが、潜入捜査官としての説得力を出すために、クラシカルなメイド服を選択しました。 「そもそもメイドとは?」と議論し、お掃除キャラを際立たせようと「悪の汚れ、お掃除させていただきます!」を決め台詞にしました。 全体はミステリー仕立てですが、時代劇の構成も研究し、名シーンを散りばめています。一番のみどころは、主演の福田沙紀さんがほとんど吹き替えなしで殺陣をこなし、まるで踊っているかのような立ち回りです。ご存知「斬られ役」の福本清三さんや東映剣会のみなさんの迫力で、時代劇にも勝るとも劣らないアクションシーンの連続です。 また、この作品は「スケバン刑事」へのオマージュを捧げております。「メイド刑事(デカ)」第6話の撮影では南野陽子さんをゲストに迎え、「メイド刑事&スケバン刑事」の競演が実現しました。「おまんら許さんぜよ!」とヨーヨーを投げて悪を斬る南野さんは、想像以上に迫力満点でした。福田沙紀さんの名前の由来が、スケバン刑事の「麻宮サキ」にあるということもあり、キャスティングは当初からの願望でした。 「メイド刑事」で最も重要なのが潜入先です。悠久なる京都を舞台にしているので、どこにロケに行っても絵にはなるのですが、豪邸に潜入するのがメイド刑事なので必然的に室内の撮影が多くなります。京都らしさを出すために、花街・お座敷や川床にも潜入します。そこでくりひろげる大立ち回りに一騎打ち! ここで重要なのが、敵が持つ武器です。ムチを持ったり、ヌンチャクを巧みに操り、かんざしを手裏剣のごとく投げ、新体操のリボンを目くらましに使うなどなど監督と殺陣師さんと入念に打合せをして、アクションを派手にしていただいています。また、金曜の夜に、リラックスして視聴していただけるようにと「遊び感覚」を意識しています。 一方、「メイド刑事」若槻葵は幼き頃、両親と死に別れている悲しい過去を持つ主人公なので、「家族への憧れを持って生きているから、強くなれる」という「家族」というキーワードも意識しています。 8月3日現在、最終回を只今撮影中です。いよいよ「メイド刑事」ファミリーは、ラストスパートです。どうぞご覧ください。

私の新人時代

東映アニメーション㈱ 企画営業本部  関  弘美

東映アニメーション㈱ 企画営業本部 関 弘美  「映画と漫画と児童文学が大好きです! ついでにお酒も飲めます」と応えて、会社に潜り込み、四分の一世紀が経とうとしています。右の写真はその頃のものですが、「今でも変わらないね!」と、ダーリンにはよく言われています……溜息。(気を取り直して)早稲田のシナリオ研究会の大先輩・大和屋竺氏に拙い脚本を読んでもらい師事したことがきっかけとなり、当時の東映動画⑭企画営業部にアルバイトとして入社し、毎日毎日あらゆる漫画を読み、毎週月曜日に企画書を提出すること二年間。「漫画読むことが仕事です」と応えて羨ましがられることにも飽き、ついに、オリジナルものの企画書『明日のナージャ』を書き上げたことで、念願の製作現場でAPにつけることになりました。4Kの職場として有名なアニメの製作現場でしたが、当時は女性スタッフも少なく、みんなに「お嬢」と呼ばれ、とても大切に扱ってもらえました……今と違って……嘆息。(ここで深呼吸)当時は『Dr.スランプ』『キン肉マン』『ドラゴンボール』『聖闘士星矢』『北斗の拳』など、少年ジャンプ作品のアニメが大ヒットで、数多のプライムタイムを賑わし、視聴率も、20%を切ったりしようものなら、局プロの方々に「廊下の真ん中を歩けない」とお叱りを受けていました。ところが若かった私は、「顔の見えない視聴者の数よりも、小田急線の1車両にウチのアニメのキャラクター靴を履いている子供が何人いるか、という方が、作り手にとってのリアルな数字だと思います」とか、「イタリアで『キャンディ・キャンディ』を自国のアニメだと思って夢中で観ていたマンマの人数こそ、私は知りたい」とか言ってしまい、上司に耳打ちされました。「お嬢さんね、大人の世界では、真実を大きな声では話さないんだよ」と。 あれから四分の一世紀(しつこい)を経て、十分大人になったはずなのに、こうして書いちゃう私は、今でも、「リアルな真実」が好きな新人なのかも。『おジャ魔女どれみ』シリーズを観て、学校に行こうと思ってくれた不登校の子供からの手紙。『デジモン』シリーズを観て南米から送られてきた独創的なモンスターのクレヨン画。『プリキュア』シリーズの映画にライトを振って応えてくれる女の子たちの真剣なまなざし。視聴率幻想が崩れてしまった現在のほうが、こういう真実をプロデューサーの誇りだと、胸を張って言えるので、新人みたいにワクワクしちゃいます。

事務局だより

正会員入会

退会

第47回 プロデューサー協会 ゴルフ会開催のお知らせ

※今回も休日の開催です。 初めて参加される方は事務局までご連絡下さい。
  (社)日本映画テレビプロデューサー協会 親睦委員会 TEL(03)5338―1235

インフォメーション

◎会議の記録 と予定

7月17日(金) 第2回定例理事会(東映本社)

8月10日(月) 会報委員会(事務局)

9月14日(月) 会報委員会(事務局)

9月29日(火) 第3回定例理事会(東映本社)