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山本希望「歌の苦手意識あった…」ラップで磨かれた声優人生、『ヒプマイ』初の女性キャラCDへの想い

撮影:草刈雅之/(C)oricon ME inc.

 音楽原作キャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』から、初の女性キャラクターによるCD『Verbal Justice』がリリース。「中王区“言の葉党”」の3人が繰り出すガールクラッシュな4曲に加え、新作ドラマトラックが収録されている。メンバーのひとりである碧棺合歓を演じるのは、『ヒプマイ』参加以前より「MCのじょ」としてラップに取り組んできた声優の山本希望。ヒップホップの重鎮が手掛ける楽曲と、声優が披露するラップの完成度の高さで支持されてきた『ヒプマイ』に、両カルチャーをリスペクトする彼女はどう臨んだのか。

Awich、あっこゴリラ本人の仮歌に「プレッシャーでいっぱいに…」

  • 中王区“言の葉党”初のCD『Verbal Justice』

    中王区“言の葉党”初のCD『Verbal Justice』

――「中王区“言の葉党”」としての楽曲は、2021年に「Femme Fatal」が公開されましたが、今回は初のCD化。手応えはいかがですか?

山本希望まず、中王区の新曲をAwichさん、合歓のソロ曲をあっこゴリラさんが提供してくださったことに、本当に感動しました。『ヒプマイ』が“本気度が過ぎる”プロジェクトであることは知ってはいたものの、私みたいな、ただのラップ好きが日本のフィメールラッパーの最重要人物の方々が書かれたリリックを歌えるなんて…! ただその分、仮歌を聴いたときはプレッシャーでいっぱいになりました。

──仮歌はご本人が歌唱を?

山本希望そうなんです! お2人の色もクセもしっかり出ていて、オリジナルのラッパーさんが歌ったものが“正解”であるのは確かなんです。だけど、私の仕事はそれを「合歓」として落とし込むことです。キャラクターだったらこの曲をどう歌うのか、どうラップするのか。『ヒプマイ』のキャストみなさん、そのことにはいつも悩んで苦しんで考え抜いてレコーディングに臨むとおっしゃっていました。

──合歓は芯が強く、ラップスキルも高いキャラクターですよね。

山本希望大変な役割だなと(苦笑)。ただ、『ヒプマイ』のすごいところは、普段はご自身のことを歌ってるラッパーのみなさんが、そのキャラクターのことを一心に考えて、リリックを書いてくださってることなんです。その一言一言が、キャラクターに寄せていく上でのヒントになると気づいてからは、収録までの練習をすごく楽しめるようになりました。Awichさん、あっこさんの独特のリズムをつかむために、仮歌だけでなくお2人の楽曲もこれまで以上に聴きましたね。

「等身大の女性にも勇気を与えられたらうれしい」“合歓”で表現した生き様

──合歓の初ソロ曲「Independence day」は、疾走感あふれるミクスチャーロック。キュートな妹ボイスで叩きつける尖りまくったラップがカッコいいです。

山本希望タイトル通り、テーマは“自立”です。洗脳から解き放たれた合歓が、「ここから変えていくぜ」という強い意志を歌っています。合歓の普段のボキャブラリーにはなさそうな歌詞なので、作品をご存知の方には「合歓ってこんな口調?」って驚かれるかもしれません。

 だけど、実はきちんと読み解くと、「たしかに合歓だ」ってわかっていただけると思うんです。おっとりした妹キャラの合歓ですが、本来はものすごくガッツとエネルギーに溢れた女性。でなければ、若くして「中王区の行政監察局副局長」にまで登り詰められなかったはずです。つまり、“内なる合歓”を表明したのがこの曲なんですよね。ラップって、どのジャンルよりも決意や生き様を語るのに適した音楽だと思っているんですけど、内なる合歓を楽曲という形で表現できたのは、演じ手として本当にやりがいがありました。

──「中王区“言の葉党”」は男性が除外された世界の政党で、その楽曲は、どれも女性をエンパワーメントしてくれる内容です。ファンのみなさんに、合歓のソロ曲をどう受け取ってもらいたいですか?

山本希望合歓はほかの2人より若いだけに、東方天乙統女さんのような妖艶さや、勘解由小路無花果さんのような威圧感はありません。だからこそ、「相手を言葉でねじ伏せる」よりも、「自らを鼓舞する」ようなリリックになっています。ダメな自分を認めながらも、1人の女性として信念を持って生きていきたい、と。『ヒプマイ』の世界観を超えて、等身大の女性にも勇気を与えられる楽曲になっていたらうれしいですね。

「ラップができたら、声優としても一皮剥けるんじゃ…」自作ラップも披露

──山本さんは、『ヒプマイ』に参加する前から、自身のYouTubeチャンネルで自作ラップを披露されてきました。ラップというジャンルに惹かれる理由は?

山本希望音楽として好きというのもあるけれど、声優もラップも、言葉に注力した表現として相性がいいというのは常々思っていました。「ラップができたら、声優としても一皮剥けるんじゃないか…」と思ったのが、取り組み始めたきっかけです。あと、もう1つの共通点として、ラップって究極の“キャラクターソング”なんじゃないかと思うんですよ。

──ラップはキャラソンである、と?

山本希望はい。ラッパーさんってご自身について歌うことが多いけれど、それは表に見せたい自分。ある意味で、キャラクター化された自分を描いてアウトプットしているのが、ラップのリリックだと思うんです。一方でキャラソンも、「私ってこういう子なの」というプロフィール的な歌詞が多くて、声優はそれをキャラクターとして歌う。これほどまでに親和性があるジャンル同士なだけに、『ヒプマイ』ががっつりハマったのも不思議じゃないですよね。

──とは言え、ラップはスキルを要するジャンルです。「声で演じる」だけでない幅広い表現が声優に求められる現状を、どのように受け止めていますか?

山本希望言葉と声のプロフェッショナルになりたくてこの世界に入ったんですが、今の時代、それだけ頑張っていてもこの仕事はクリアできないということは身をもって実感してきました。それこそ歌もずっと苦手意識がありましたから…。

──たくさんのキャラクターソングを担当してきた山本さんでも?

山本希望はい、得意じゃないんです。だから、ラップに出会ったときには「なんて自由な音楽なんだ!」と胸を打たれて。その頃から、「自分の持ち味を生かせる声優になりたい」と思うようになったんです。苦手なことに頑張って対応していくのも、仕事の上では大切なこと。だけど、もっと心の向くままに興味のあることを突き詰めて、それが結果的に仕事に結び付いたら、こんなに幸せなことはないなって思ったんです。だから、『ヒプマイ』に参加できたことには、本当に感謝しているんです。

──では今後、YouTubeチャンネルの「MCのじょ」の活動はどのような展望を描いていますか?

山本希望コロナなどもあってなかなか更新できていないんですが、曲作りやラップは一生続けたいですね。夢は、何十年後かに老人ホームに入って、おじいちゃんおばあちゃんたちでサイファーをすること。その頃には『ヒプマイ』の世界のように、誰もがラップでコミュニケーションする時代になってたらいいなと、そんな未来を描いています。
4月12日発売/2,500円(税込)
作品詳細はコチラ(外部サイト)

カリスマ的人気で注目のラッパー、Awichが手がけた表題曲のほか、東方天乙統女、勘解由小路無花果、碧棺合歓のソロ曲や、新作ドラマトラックを含む全5曲が収録。

山本希望さん、サイン色紙プレゼント

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