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「これ本当にプラモ?」ガンプラモデラーたちが描いた宿敵「ジオング」の“動”と“静” 脚部なく“未完成”と揶揄されても人気の理由

写真左/『ガンダム VS. ジオング』 制作・画像提供/hana氏 写真右/『ア・バオア・クー』 制作・画像提供/ヨッシー氏 (C)創通・サンライズ

写真左/『ガンダム VS. ジオング』 制作・画像提供/hana氏 写真右/『ア・バオア・クー』 制作・画像提供/ヨッシー氏 (C)創通・サンライズ

 以前紹介した「サザビー」とともに、宿敵として、ガンダムを苦しめたからこそ愛されるモビルスーツ(MS)がある。シャアが搭乗した「ジオング」は、脚部のない状態で実戦投入され、「未完成品」と揶揄されながら激闘を繰り広げ、多くのファンを熱くした。今回紹介する2人も、そんなジオングを主軸に置いたシーンを作品として表現。ジオングがいるからこそ語れる物語を作品として紡いだ。ガンプラモデラーを魅了し続けるジオングの魅力とは?

制作よりも手に入れるのに苦労「その分余計に愛着がわいて丁寧に作った」

 『機動戦士ガンダム』で、ジオングのハイライトともいえる最後の激戦をガンプラで表現したのは、大きな改造を行わず丁寧な下処理と塗装でガンプラの持つ造形の美しさを生かした写真作品を発表しているモデラーのhanaさん(@hana41418236/インスタグラムではtsuta772さん)。「このシーンへの特別な思い入れがあるかといいますと、実はそれほどありません(笑)」といいながら、「『RGジオング』はとても良いキットだったので、4ヵ月という長い時間をかけて作りました」と、手塩にかけて制作した。

「ガンプラの制作よりも『RGジオング』の購入で苦労しました(笑)。通販では買えなかったので、朝なら買えるかなと家電量販店に行ったらびっくりするくらいの長蛇の列。あわてて最後尾に並びました。店頭に並んで買うなんて40年ほど前のファーストブーム以来です。だから余計に愛着も生まれたんだと思います。キットのデザイン、ディティール、可動、組み立てやすさと、出来の良さに感動しまして、これまでで一番丁寧に作りました。特にメタリック塗装にも凝って、腕や間接、スカートの中をシルバー、ゴールド系だけでも7、8色使って塗り分けています。撮影するといまいちわからないのですが。隙間からチラリと反射する輝きの差がきっと作品のクオリティを高めて見せてくれているはずです、たぶん(笑)」

 同氏の話通り、キットのクオリティの高さ、自身の丁寧な制作も相まって、激闘を表現する会心の作品が完成。ジオングもさることながら、ガンダムのかっこ良さも見事に表した。

「ジオング側からの視点で、ガンダムは大きさの対比を見せてるので小さくしか写らないのですがかっこよく見えるポージングに気をつけました。オリジン版のキットは可動が優秀で、滑らかな動きが再現できるのでとても良いですね」

 このメイン写真の逆になるガンダムからの視点の作品も発表。こちらもジオングの威圧感とともに、ガンダムの勇猛さを表現し、多くの人に賞賛された。

「最終回の劇中シーンの再現をやってみました。劇中ではジオングはこの時点で左手を破壊されていますので、完璧な劇中再現を目指しているわけではなく、あくまでイメージです。ジオングはファーストガンダムでシャアが搭乗する最後の機体。つまり“ラスボス”です。上半身だけでガンダムの全高と同じくらいの大きさがありますし、対峙したときはものすごい威圧感があることでしょう。なるべくデカくて恐怖を感じるようなイメージでライティングしました。(そのカットでは)ガンダムは背中しか見えないのですが、圧倒的な敵を前にもひるまない覚醒したアムロの強さが表現できたのではないかと思います」

 制作、撮影とガンプラを存分に楽しんでいる同氏。最後に同氏にとって、ガンプラとはどのような存在かを聞いた。

「私は、SNSを通じて『ガンプラ』という共通の趣味を持つ人たちと知り合うことが出来ました。モデラーはもとより、ファーストブーム世代を過ごした方々、作品を評価して欲しいという中学生、撮影の仕方を教えて欲しいという海外の方などなど…。直接は会ったわけではないですが、世代を超えて、いろいろな人に出会わせてくれます。『作る』『撮る』『発信する』『知り合える』と、一粒でいろいろ楽しめる、懐の深い面白い趣味ですね」

オラザク金賞受賞作は“異次元な雰囲気”のジオングを目指して制作をスタート

 『機動戦士ガンダム』の最終決戦と言う“動”のジオングを表現したhanaさんだが、動かずに鎮座する“静”のジオングを表現したのはモデラーのヨッシーさん(@uta_12241129)。もともと作ってみたいと思っていた『MG 1/100ジオング』だったが、こちらも手に入れるのに一苦労したという。

「欲しいと思っていたんですが、いつの間にか店頭から消えてしまい…。そうなると余計ほしくなるのが人間の性で、行きつけのお店を頼ってなんとか手に入れることができました。ただ、実際作るまでの間にいろんな構想が浮かびました。『機動戦士ガンダム サンダーボルト』の世界観が大好きなのですが、サイコザクのあのバカでかいロケットをジオングに付けたらスゲーだろうなとか。で、サイコザクを購入し、『自分流のパーフェクトジオングにしよう!脚なんかいらん異次元な雰囲気のジオングを目指し、ジオラマ仕立てにしよう』と、目標を定め、制作を始めました。あのバカでかいロケットを背負った時点で、動きのあるポージングや躍動感あふれるジオラマは無理だなと思い、基地とか工廠(軍需工場)にして動きは、周りで働くジオン整備兵に任せました」

 圧倒的な存在感でア・バオア・クーの格納庫に鎮座するジオング。本作では交戦後のようなウェザリングが施されているのだが、それもまた物語があるという。

「ジオングは試作機が3機作られており、それぞれア・バオア・クー内のドックに格納されていたといわれています。形状など詳細まではわかりませんが、私の勝手な設定では2号機、3号機は戦闘で受けた攻撃などで格納庫ごと大破しており、一番最初に作られた試作1号機のみが残っている。1号機なので何回も実践に近いような実験的なテストを繰り返しており、使用感やダメージが残ったまま。それにシャア大佐が乗るとなったので、推力を増大させるためのロケットは後付けしようという設定にしました。なのでロケットはダメージとか使用感のない仕様で制作をしました。アニメの物語との繋がりとかあまり気にしていないので気にいらない方もいると思いますが、それこそガンプラは自由なのだと…。“オラ設定”という造語があるぐらいですから、これでいいもいいのかなと(笑)」

 スケール感のあるダイナミックな作品でありながら整備兵や格納庫の細かな仕様まで丁寧に作られている。

「ジオングの大きさとロケットの長さなどを考慮して大まかな大きさを決めていきました。奥行き・長さ・高さ、見せ方もいろいろ考えましたが大変そうなことばかりが想像できたので、一番シンプルに横からのアングルで切り出そうと決めました。
このデジタルな世の中ですがモデリングに関して私はまだまだアナログでして。段ボールで全体の収まる大きさをイメージしたり紙に書いて型紙をいくつも作ったりホント手作業です。電卓はよく使います(笑)。整備兵はビルダーズパーツ製の人形をたくさん使いました。ココって所の人はポーズを変更したり、もっと自然に見えるように加工したりしました」

 この細かな作業も実り、昨年末の『第25回全日本オラザク選手権』で金賞を受賞した。9回目の挑戦でようやく手にした大きな賞に「うれしいです。一言でいえばもうこれです。シンプルすぎますかね」と喜びを隠さない。そんな同氏に、ガンプラを制作するうえでの信条を聞いた。

「キットの良さも生かしつつ、自分の色も付けくわえていく感じの制作スタイルです。いつもゴテゴテとした印象になる傾向にあります。モデラーのらいだ〜Joeさんが以前「僕はMSには哀愁を感じるんです。そういうMSはかっこいいです」と言っておられました。兵器として作られたが故に背負っているもの、操る人が背負っているもの、人型に作られたがためにいろいろなことが相まって哀愁をかもし出して感じてしまうのではないかと…。私もそういう作品を作れるように頑張ろうといつも心がけています
 私にとってガンプラは、ライフワークでもあり、楽しい仲間との繋がりを作ってくれるツールでもあり、自分を表現できる場所のような存在です」

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