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映画『板尾創路の脱獄王』の真の目的とは…?






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 お笑い、俳優、作家、歌手…とマルチに活躍するカリスマ・板尾創路。2010年の年明け早々から、映画の面白さ、オリジナリティで楽しませてくれるのは、この男を置いてほかにいない。板尾が長編映画の監督・主演に挑んだ『板尾創路の脱獄王』が、16日より全国公開になる。どんなに強固な牢に閉じ込められても“脱獄”を繰り返す男の物語は、既成の“枠”を楽々と超えていく板尾創路のクリエイティビティそのものにも見える。 唯一無二の“エンタテーナー王”板尾創路の真の目的とは何か? ORICON STYLEの取材に板尾が答えた。


長編映画初監督作品を語る板尾創路(C)ORICON DD inc. 

長編映画初監督作品を語る板尾創路(C)ORICON DD inc. 

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◆なかなか人に伝えにくい、宣伝しにくい作品

――公開を間近に控えた心境から伺います。

【板尾創路】 ゼロから作って、やれることは全部やって、1つのものを作り上げたという感じがあるので、この映画は自分自身というか、自分の分身というか…。かわいい存在でもあるし、なんか不憫に思うこともあるし(笑)。ただ、公開してしまうと、自分の手を離れてしまうという寂しさもありますね。


――不憫に思うって…、どういうことですか?

【板尾】 なかなか人に伝えにくい、宣伝しにくい作品なので。コメディでもないし、アクションでも、サスペンスでもない。もちろん、ドキュメンタリーでもないし、原作があるわけでもない。今、流行りのイケメン俳優が出演しているわけでもない。わけのわからないタイトルやし。ただ、映画館で観て欲しいという想いは強いんだけど…。僕のことを知らない人でも楽しめるように作ったつもりですし。


――しかし、出演陣の顔ぶれは名優ぞろいです。板尾さん演じる主人公・鈴木雅之がなぜ脱獄を繰り返すのか、その謎に迫る看守・金村役の國村隼さんは台本の段階からあて書きしていたそうですね。

【板尾】 はい。そのほかの出演者も皆、芝居のレベルが高い人ばかりですね。ぼんちおさむさんは、笑っていても恐いんですが…、その恐さがこの映画にはにじみ出ています。『はぐれ刑事純情派』(テレビ朝日系)の人情派刑事より、おさむさんらしさが出ていると思います。


――脱獄を繰り返す男の物語の着想はどこから?

【板尾】 長編映画を作るという話からして唐突で、製作の時間も限られていた。ゼロから考え出さなければならなかった。刑事ものにしようかなとか、アクションものにしようかなと、いろいろプロットを考えてみたりしました。何か作る時には、助走が必要。刑事ものにしたら当たるかなとか、そういうことを考えるのではなくて、頭を柔らかくするために、ごちゃごちゃといろいろなアイデアを出して、そこで時間も潰しましたけど、その結果たどりついたのが“脱獄もの”でした。決まってからは、わりとすぐに物語の本筋ができ上がりました。



(C)2009「板尾創路の脱獄王」製作委員会
――脱獄しては捕らえられ、収監される。それを繰り返すごとに罪が重くなり、拘禁の厳しさが増していく。それだけなのに、面白い。そして、綿密に組み立てられたプロットが誘うエンディングの妙。参考にした作品はあるのですか?

【板尾】 『大脱走』(1963年/米映画)とか、『パピヨン』(1973年/米映画)、『ミッドナイト・エクスプレス』(1978年/米英合作映画)のイメージはありますよね。主人公・鈴木は胸に“逆さ富士”の入れ墨をしているんですが、これはまさに『パピヨン』ですね。スティーブ・マックイーン演じる主人公の男が、胸に蝶の入れ墨をしていることで“パピヨン”と呼ばれていたんだけど、そういうのがやりたいと思って、蝶の代わりに何にしようかなと考えるのは楽しかったですね。


 名作映画を意識して演出した部分もあれば、出来上がってから、これはアレの影響を受けているなって、自分で気付くところもいっぱいありました。最近になって気付いたのは、テレビアニメの『ルパン三世』。それも、大人向けに作られた第1シリーズの影響を受けている感じがしましたね。


――タイトルも板尾さんらしいというか…。

【板尾】 僕自身が、この映画、観てみようかなって思うきっかけになるのが、ポスターだったり、映画のタイトルだったりもするので、タイトルはすごく大事。作品を象徴していて、興味をひいて、それプラス、見終わった後に、まさにこのタイトルだと納得させられるものでなければならない。『板尾創路の脱獄王』は、はじめはふざけ半分でもあったんだけど、だんだん馴染んでくるし、完成したのを観て、納得できたんで、このタイトルにしてよかったと思いますね。


◆情熱を持って真摯に向き合うと、自然にうまく事が運ぶ

――長編映画の監督をやってみて、何か新しい発見はありましたか?

【板尾】 当初はそんなつもりで作ったわけではないんだけど、映画を作って初めて世界を感じました。いままで僕がやってきたことって、お笑いのファンというか、僕のファンというか、日本というか、そういうのが相手だったんだけど、映画は世界を相手にしているというかね。国際映画祭にいくつか参加して、そう思いました。世界に発信しようなんて、そんなことは全く考えていなかったんだけど、映画はほかの国の人にも観てもらえて、面白ければ評価してもらえるし、伝わるものは伝わるんだなというのを体験できたのは、よかったですね。



「考えていた映画にほぼなった」と自信を見せる板尾創路(C)ORICON DD inc.
――板尾さんのそのクリエイティビティの源はどこにあるのでしょう。

【板尾】 昔は、この映画を観ないとあかんとか、本も読まなあかんとか、思ったりした時期もありましたけど、無理して何かしても身にならないというか。観たいと思ったら観ればいいし、聴きたくないものは聴かなくていいし、知らなくてもいいこともある。だから、勉強なんてしていないですよ。


 ネタ帳もないし、自分で覚えているものがすべてだし。その時、その場で求められているに対して、自然とわき上がってくるもので、やっていくようにしていますけどね。正直な話、温めていたアイデアとか無理矢理引っ張り出して、はめ込もうとしても絶対に合わないし、その時、ふっと頭に浮かんだことには、ちゃんと意味があるわけで、ホンマに日々、生きているだけですよ。


 知らんかったら知らんなりに、影響を受けなくていいこともあるし。いろんな情報を集めたり、勉強したりするのは悪いことではないと思うけど、それを捨てる勇気はあるのか、それに振り回されない自信はあるのか。人間、生きているだけで、いろんなものを目にするし、耳にも入ってくるから、絶対、何かしらの影響は受けているからね。それだけも大丈夫だと思いますね。


――では、その時々、その場その場でうまく事を成す秘訣があれば教えて下さい。

【板尾】 一生懸命、その作品とか仕事に対して、気持ち込めて向き合うことしかないんじゃないですか? 映画にしても、コントにしても、CDを出した時も、情熱を持って真摯に向き合っていると、自然にうまく事が運ぶ。つじつまがあってくるというか、うまく馴染んでくるというか、自分では思いつかなかったところに、ちゃんと意味が出てくるとか。でもそれは、たまたま偶然じゃなくて、無意識にやっていた必然。1人で何か作っているときも、映画みたいに大勢のスタッフ・キャストがいる現場でも、いいもの作ろうと一生懸命に動いている時って、なんでもそういうもんでしょう。


――最後に、思いっきり、映画の宣伝をして下さい。

【板尾】 正直いうとね、おすすめはそんなに…、しないですけど…(笑)。「この映画好き」という10代がいたら気持ち悪いけど、若い人にも観て欲しいですね。わざわざ観に行く理由がないと思っている人にも、こういう映画もあるというのを知っておくのも悪くないんじゃないかと。楽しめるかどうか、保証はしませんけどね。


――シュールですね…。貴重なお話、ありがとうございました。

板尾創路 いたお・いつじ

1963年生まれ。大阪府出身。1986年に蔵野孝洋(ほんこん)とコンビ・130Rを結成。その独特な存在感や飄々としたキャラクター、多彩な才能で、近年は個人での活動が目立っている。テレビドラマや映画、舞台など俳優としての活躍も目覚しく、『女の子ものがたり』(2009年、森岡利行監督)、『空気人形』(2009年、是枝裕和監督)などの好演、怪演が注目されている。著書『板尾日記』(リトルモアより1〜4巻既刊、続刊)は累計15万部を超え、さらには「シンガー板尾」名義でCDもリリースしている。長編映画では本作が第1回監督作品となる。
『板尾創路の脱獄王』

【ストーリー】
昭和初期。信州第二刑務所にひとりの男が移送されてくる。男の名は鈴木雅之(板尾創路)。胸に逆さ富士の刺青を入れたその男は、無口で物静かな様相とは裏腹に、拘置所を2度も脱走したいわくつきの囚人だった。その後も、鈴木はどんな刑務所、拘置所に収容されても脱獄しては、すぐに身柄を取り押さえられ、収監される。この繰り返しに、人々は彼を英雄のように「脱獄王」と呼び称えたが、看守長の金村(國村隼)だけは「この男には何かある」と勘付く。最初は微罪で捕らえられた鈴木だが、脱獄を繰り返して刑期は計り知れないほどふくらみ、ついには戸籍すら抹消されてしまう『監獄島送り』になってしまう。一体なぜ脱獄を繰り返すのか? なぜ逃げるのか? 何から逃げているのか? 鈴木の真の目的とは…。

監督:板尾創路
脚本:増本庄一郎・板尾創路・山口雄大
出演:板尾創路 國村隼
製作:吉本興業 角川映画
配給:角川映画
(C)2009「板尾創路の脱獄王」製作委員会

1月16日(土)より東京・角川シネマ新宿ほかにて全国公開

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