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ナイツ塙宣之、77歳・義父との生活で見つけた“理想の老後” コスパ重視の世の中でも“やらないといけない”「思考の過程を聞く」

 漫才協会副会長として、関東の漫才界をけん引し“愛すべき師匠たち”を紹介しているナイツ塙宣之(45)。ニッポン放送『ナイツ ザ・ラジオショー』(月〜木 後1:00)、同局『高田文夫のラジオビバリー昼ズ』の木曜レギュラー、そしてTBSラジオ『土曜ワイドラジオTOKYOナイツのちゃきちゃき大放送』(毎週土曜 前9:00)を担当するなど、まさに“ラジオの顔”としても活躍しているが、ラジオを聴いていると「静夫さん」というワードが頻繁に登場する。静夫さんは漫才協会の師匠ではなく、ともに生活している塙の義父にあたるが、師匠たちに引けを取らないほど、チャーミングなエピソードが豊富だ。そんな静夫さんとの日々をつづった書籍『静夫さんと僕』(徳間書店)をしたためた塙に、静夫さんとの生活などを聞いてみた。

書籍『静夫さんと僕』(徳間書店)をしたためたナイツ・塙宣之

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■初対面で「ギギギギ」と笑っていた静夫さん 強い“縄張り意識”に困惑も「仕方ない(笑)」

 同書では、静夫さんについて、次のように紹介されている。「僕と共に暮らすお義父さん。僕は今、都内の一軒家に住んでいる。僕の奥さんと3人の子どもたち、そして奥さんの両親と同居する、いわゆる二世帯住宅だ。静夫さんは1945年生まれ、奄美出身の77歳。長年、東京で自動車教習所の指導教官や、タクシー運転手をしていたけど、数年前に脳梗塞になり、足腰を悪くして糖尿病も患い、いまはゆっくり隠居暮らし中」。ここでは挙げきれないほど、魅力にあふれた人物で「四季を通じて、家では下着姿。定番は股引にランニング」「性格は頑固。そして、しつこい」「ありがとうとうれしいが口ぐせ」「いつ眠っているか誰もわからない」「自由奔放だが、家族への愛情は揺るがない」といった性格だという。

 書籍の中でも紹介されているが、塙が結婚の意思を伝えるために家を訪れ、静夫さんと初対面を果たした時のこと。「はじめまして、娘さんと交際しています塙と申します」とあいさつした塙に対して、静夫さんは「ギギギギ」と笑っていた。「娘さんをください」というようなフレーズを伝えられるか、緊張していた塙だったが、そんなムードにはならず「話しているうちに『結婚したいのですが』とさらっと告げると、『ああ、どうぞどうぞ!』とぬるっと結婚を許してもらった」。だが、そこには、父としての愛情も込められていたことが、後々わかった。「娘が決めて選んだ男の人なんだから、信用できないはずはないでしょ。これも大きな運命の中で定められた、大切なご縁だ!娘を信じるのと同じように、パパはのぶたんを信じてたよ」。

 愛にあふれた静夫さんだが、こだわりの強さゆえに、家族が困ることも。塙が笑顔を浮かべながら話す。「自分の縄張りだけは絶対踏みこませないというか…。例えば、僕が自分の車を洗車したいとなったとして、洗車で使う水道のところに行くと、もう静夫さん仕様になっちゃっていて、蛇口へのつなぎ方とか訳わからないんですよ。本当はみんなで使うものなのに、静夫さん用にカスタマイズされているから、どうやって水が出るかわからない状態になっちゃって…。浴槽に野草を飾ったり、家のいたるところにモノを置いたりしているのですが、人のアドバイスは聞かない人なので『これ以上は…』という一線をこえない限りは、仕方ないと、あきらめています(笑)」。

書籍『静夫さんと僕』(徳間書店)をしたためたナイツ・塙宣之

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■世の中のいざこざが起こる理由を分析 今こそ求められる“対話”

 基本的には、静夫さんのペースも尊重しながら生活をしているが、寛容な塙も静夫さんに語気を強めたことがある。ある番組で、台本に沿って共演者とのやりとりを行ったが、その様子を見ていた静夫さんが「いつもの、のぶたんらしくなかった」と伝え、塙がそれなりに返答していると、食い下がってダメ出しをしてきたことから、ついついムキになって「いい加減にしてください!」と声を荒らげてしまった。このエピソードを振り返る中で、塙の家族観が見えてきた。

 「例えば、僕が漫才とかで毒舌を吐いたとしても『あなたはそんな子じゃなくて頑張っているね』って言ってくれる存在って、家族しかいないと思うじゃないですか。でも、意外に家族の方が『あんた、そういうこと言う人だよね』って言ってきたりして(苦笑)。それって、一般の家庭でもあることだと思うんです。子どもの立場からすると、優しい声をかけてほしいのに、親の方は子どもに恥をかいてほしくないと思うから、あえて厳しいことを言うみたいな。家族には、その辺の悩みとかをわかっていてほしいけど、静夫さんは『のぶたん、なんかいつもと比べて面白くなかったね』と平気で言うので、その時はムカついちゃったんです(笑)。こっちが大人になって、その意見を受け入れて、そうですね…って言わないといけないのですが…」

 塙の思考は、そこからさらにめぐっていく。「静夫さんも愛情のある人なので、テレビで僕を見た時に『いつもよりも面白くない』と思って、それを善意で伝えようと思ったのではないかなと。静夫さんが、家族から『なんで、ここにこんなモノを置くのよ!』と一方的に言われることがよくあるのですが、実はその思考にいたるまでの過程をちゃんと聞いてみる作業って大事じゃないかなと思っていて。今の世の中ではやらないじゃないですか、その作業ってコスパよくないから。でも、本当はその過程をやらないといけないんですよね。世の中のいざこざって、きっとそういうところから起きていて、周りから見たら何か変なことをやっている人に対して、テレビとかでもただ“変な人”という伝え方になってしまうじゃないですか。(声色を作って)そういった世の中への思いを伝えるために書きました(笑)!」。その上で“対話”の必要性を説く。

 「対話するっていうことはすごくいいことだと思うんです。意見をぶつけることで、考えがまとまっていくことはいいことだと思う。僕は『この人はこういう人だ』と決めつけちゃうのが嫌いなんですよね…といいながら、この本では静夫さんのキャラクターを理解してもらうために、多分にそういう書き方をしてしまっているのですが。でも、今回静夫さんにインタビューまでして、これだけ書いても、まだ静夫さんのことはわからないんですよね。みんな、自分が主役として生きているから、静夫さんにとっても、自分が主役としての立場から見たら、僕たちの言動がおかしいと感じる部分が多々あるのだろうなと思います」

書籍『静夫さんと僕』(徳間書店)をしたためたナイツ・塙宣之

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■ドラマ化では夢キャスト実現? 壮大な裏テーマも「自分の親と最後どう向き合えばいいのか」

 ドラマ好きの塙に「この本をドラマ化するとしたら、キャストはどうなりますか?」と向けてみた。「静夫さん役は西田敏行さんにやっていただきたいですね。それで、僕役を長瀬智也さんにやってもらって、脚本は宮藤官九郎さん…『俺の家の話』ですね(笑)」。塙の“人への好奇心”を感じることもできる1冊となっているが、最近もこんなことがあったのだと教えてくれた。

 「近所に、めちゃくちゃ面白いおじさんを見つけまして。84歳の方なのですが『ウチで1杯やりながら話しましょう』と誘ってもらったので、この前お邪魔したんです。自動車メーカーの技術職で、世界を飛び回って、教えたりしていた人みたいで。その人もずっと、技術の話が大好きで、止まらないんですよ。僕はそれを聞くのが楽しくて…。マセキ芸能社の会長もそうでしたし、漫才協会の師匠方からも、ずっとそういう話を聞いてきたので、僕はもうおじいちゃん世代の人の話から逃れられない人なのかもしれないです(笑)」

 自身もこれから年齢を重ねていくが、理想は「静夫さん」だという。「自分も年取ったら、静夫さんみたいに、自分の好きなことだけをやっていくみたいにしたいなって思います。この間、伊集院光さんと対談したんですよ。僕が『伊集院さんって、あと20年くらいしたら絶対天下を取るんじゃないかなと思うんです』って伝えたら、伊集院さんが『70歳くらいになったら、もっとテレビに出ていると思う』と話されていて。伊集院さんは、自分はかわいげがないんだけど、最近になって、物忘れとかをするようになって、若手の人たちが、自分のことをイジってくれるようになってきたんだと。『もっとイジったりもしてほしいけど、怖いと思われているので、それが70代になると怖さがなくなってくるから、もしかしたらその時が一番売れているのかも』とおっしゃっていたんです」。“老いては静夫に従え”とも言えるようなエピソードだが、塙は自身にも置き換えて思いを語っていった。

 「やっぱり、まだ僕の年齢だと割とギラギラしているじゃないですか?それが年齢を重ねることで、みんなからイジられて『ヤホーってまだやっているんですか?』みたいになった時の方がいいんじゃないかなって。静夫さんを見ていると、孫からもいじられたりすることもあるんですけど、それって偉大だなと感じているので、自分もそういう風になったらいいなと思います」

 静夫さんとの日々にほっこりしながらも「これから親とどうやって向き合うか」「自分はどのように年齢を重ねていくのか」と、自分の身を顧みる同書。塙は謙そんしながらも、静かに言葉を紡いでいった。「40代くらいの、自分の親が高齢になっている方にも読んでいただきたいですね。やっぱり、僕も親に会うたび、年齢を重ねているなと感じますし、漫才協会の師匠も、この3年で11人亡くなっているんです。だから、本当にいつ亡くなるかわからないという気持ちもあって。2ヶ月に1回くらい、訃報が入ってきて、この前まで普通にしゃべっていたのに…ということがあるので、自分の親とかと最後どう向き合えばいいのかっていうことをずっと考えますよね。ほっこりした気持ちになりながら、そういったことも考えてもらえる1冊になれば、うれしいです」。

【塙宣之】
1978年、千葉県生まれ。漫才協会副会長。2000年にお笑いコンビ「ナイツ」を土屋伸之と結成。08年以降3年連続で『M-1グランプリ』決勝進出を果たす。『THE MANZAI2011』準優勝、平成25年度文化庁芸術祭大衆芸能部門優秀賞、平成28年度芸術選奨大衆芸能部門文部科学大臣新人賞、第39回浅草芸能大賞など受賞多数。著書に『言い訳関東芸人はなぜM−1で勝てないのか』(集英社新書)、『極私的プロ野球偏愛論野球と漫才のしあわせな関係』(ベースボール・マガジン社)『ぼやいて、聞いて。』(左右社)などがある。

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