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GLAY・JIRO「メンバーが喜んでくれた」コンポーザーとしての自信 4者4様の進化で“スマートさ”追究【後編】

 4人組ロックバンド・GLAYが、2月15日に通算61枚目となるシングル「HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-」をリリースする。同作は、JIRO(Ba)作曲の「THE GHOST」と、TERU(Vo)が作詞作曲を担当した「限界突破」をリード曲に据えた両A面シングル。

シングル「HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-」をリリースしたGLAY・JIRO (C)ORICON NewS inc.

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 ライブのみで披露された幻の名曲「海峡の街にて」と、インディーズ時代のナンバーを再レコーディングで生まれ変わらせた「GONE WITH THE WIND(Gen 3)」というカップリングも含め、同バンドの過去と現在を提示する全4曲が収録されている。

 ORICON NEWSは、表題曲の1つ「THE GHOST」を手がけたJIROにインタビューを実施。ベーシスト&コンポーザーとしての現在のマインドを掘り下げた前編に続き、本記事では多彩さを極めるサウンドと、バンドの進化について自ら語り尽くしてもらった。

■インディーズ時代の曲を「鬼の一発録り」

シングル「HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-」をリリースしたGLAY・JIRO (C)ORICON NewS inc.

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――続いて、カップリング曲について。まず、「海峡の街にて」はライブで披露したことがある曲だと聞きました。

【JIRO】かなり前なので、細かくは覚えていないんです(笑)。2018年とかだったんじゃないかな。

――「海峡の街にて」は、抒情的かつウォームな非常に良質なナンバーで、これまで音源化されていなかったことが意外なほどです。

【JIRO】いい曲だなと僕も思います。音源化しなかったのは…たぶん、TAKUROの中で思うところがあったんでしょうね。「海峡の街にて」は『NO DEMOCRACY』よりも前にできた曲なので、アルバムの制作中にTAKUROの中でもっといいと思える曲が作れた、とか。ベースに関しては、「ここでこういうテイストのハイポジションが入ってくると、きっとTAKUROは喜んでくれるだろう」みたいな感じで考えていったと思います。

――レコーディングもそのタイミングで終えていたんですか?

【JIRO】2018年ぐらいにレコーディングは終えていたと思うんですけど、TAKUROが「この曲を作品にしたい」と言ってきて、「当時録った状態まま世の中に出したい」ということだったんです。「あの当時の空気感みたいなものを、そのまま出したいから」と。それを言い出したのが、確か去年の秋くらいだったと思うけど、僕としては去年1年間で今までとかなり違う世界の音楽が入り込んできていたので、今だったらもうちょっと違うアプローチをしていたかも…とも思いますね。でも、今回はTAKUROの気持ちを優先したいと思って、そのまま行くことにしました。

――もう1曲のカップリングは、今回で3バージョン目となる「GONE WITH THE WIND」。

【JIRO】これは…何で収録することになったんだっけ?(笑)経緯は覚えていないですけど、この曲は“鬼の一発録り”でした。前のツアーでやっていたので、その方がいいだろうということになったんです。僕自身も、レコーディングの前日に「そういえば『GONE WITH THE WIND』を録り直すんだっけ…」と思い出すくらいラフな感じで、家で少しおさらいをしてからスタジオに行きました(笑)。

――「THE GHOST」のように、キックの音色1つにまでこだわって綿密に作り込む曲もあれば、「GONE WITH THE WIND」のように、ライブでの経験を活かして一発録りで臨む曲もあるなど…今のGLAYは本当に面白いですね。

【JIRO】インディーズ時代の楽曲なので、当時から聴いてくれていた人にとっては、たぶん最初のバージョンがいつまでも1番だと思うんです。メジャーデビューをして、佐久間(正英)さんのアレンジで、かなりオシャレな「GONE WITH THE WIND」になったとしても。今回新たに録るにあたって、HISASHIが「インディーズ時代のバージョンでやりたい」と言い出したんですよ。そもそもHISASHIはこの曲がすごく好きで、直近のツアーで演奏したのもHISASHIからのリクエストでした。で、インディーズ時代のバージョンで録るとなったら、そこで大事なのはテクニックよりも勢いだったり、空気感だったりするので、一発録りで行くことにしたんです。

■「変わったというか、今でも進化しています」…4者4様のコンポーザー像を持つGLAY

シングル「HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-」をリリースしたGLAY・JIRO (C)ORICON NewS inc.

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――今回は録り方の面でもGLAYの振り幅の広さが発揮されましたね。もうひとつ、今作はJIROさん、TERUさん、TAKUROさんの曲が収録されていますし、HISASHIさんも作詞/作曲をされます。JIROさんから見たメンバーそれぞれのコンポーザーとしての印象などを話していただけますか。

【JIRO】TERUは…みなさんのイメージどおり、前向きですよね。タイトルがもうすべてを物語っているというか。「疾走れ! ミライ」とか「限界突破」というタイトルだけで、曲がメジャーKeyであろうが、マイナーKeyであろうが、ポジティブな感じがするじゃないですか(笑)。それが、すごくいいと思うんです。TERUは数年前に地元・函館にスタジオを作ったんですけど、そこからも「自分はもう音楽で生きていく」という覚悟を感じるし、すごくいい年齢の重ね方をしているなと思います。

――TERUさんは大らかな人というイメージが強いですが、決して大雑把な性格ではなく、繊細なスタジオワークも得意とされているんですよね。

【JIRO】はい。かなり凝り性で、曲を作るときの打ち込みとかもかなり細かくやっています。昔Yamahaの『QY10』という小さいシーケンサーがあったじゃないですか。TERUは、それでものすごく細かい打ち込みをやっていたんです。小さい鍵盤をずーっと夢中でポチポチ押していて…信じられなかった(笑)。この間も「ピアノのフレーズを作る」といってMIDIで作っていたけど、TERUはピアノは弾けないんですよ。だから、1個1個打ち込んでいったんだと思う。でも、すごく凝ったピアノのフレーズになっていて。TERUは仮にボーカルをやめても、プログラマーの世界とかで生きていけるんじゃないかな(笑)。間近で見ていて、そういう才能も感じます。

――HISASHIさんについては?

【JIRO】HISASHIは、もう何をやってもHISASHIになるという印象です。だから、ある意味で「こう来たか!」と思う場面はそんなにないかもしれません。それくらい、常にぶっ飛んでいるというか(笑)。

――HISASHIさんの曲は、すぐに彼の曲だとわかりますよね。初期の頃からサイバーな雰囲気があって、リズムが立っていて、メロディーがややダークで…というものを得意としています。

【JIRO】曲もそうだけど、イントロでHISASHIのギターが鳴ると、すぐにHISASHIだとわかりますよね。作曲家としても、ギタリストとしても強い個性を持っていて、なおかつ説得力がある。そこはすごいなと思います。

――続いて、TAKUROさんは?

【JIRO】TAKUROは、最近になってストレートに物ごとが進むのをちょっと嫌う節が出てきたなと感じています。「それは今までと一緒だから変えたい」みたいに言うことが増えたんですよ。実際、最近は斬新なアイデアとかもすごく出してくる。ライブアレンジを変えてみようと提案すると、「わかった。ちょっと考えてくるわ」と言って、その後持ってきたアイデアがめちゃくちゃ面白かったりするんです。その辺りは変わったというか、今でも進化していますね。

――以前のTAKUROさんは、曲が完成するとTERUさんを呼んで歌ってもらったり、TOSHI NAGAI(サポートドラマー)さんをスタジオに呼んで、アレンジを詰めていました。最近では自身で打ち込みなどもされるのでしょうか?

【JIRO】やりますよ。昔は本当にアナログな人だったけど、海外に1年の半分くらい住むようになったし、コロナで思うようにみんなで集まれなくなったりしたことで、「自分でやらなきゃいけない」と思ったみたい。コロナになってからは、自分でいろんなツールを駆使してデモを作るようになりました。

■楽曲の進化と思考の深化 描き出される“スマートなGLAY”

シングル「HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-」をリリースしたGLAY・JIRO (C)ORICON NewS inc.

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――では最後に、JIROさん自身のコンポーザーとしての特色などは?

【JIRO】去年ずっと聴いていた音楽を反映させる形で、今回「THE GHOST」というリズム重視の曲を作って、世の中の評価はわからないけど、メンバーが喜んでくれたことが自分の中では大きな収穫なんです。なので、ちょっとこの辺りを広げていきたいなというのはありますね。R&Bだったり、モータウンの匂いがあるものを追究したいです。ベースの面でも、今の自分ではできないことばかりなんですよ。そういう中で、まさにきのう思いついたばかりのアイデアですけど、とある既存曲を今の僕のモードで…例えばゴーストを入れた16ビートを合体させたアレンジにしたいなとも思っているんです。その曲はベースラインによってキャラクターがかなり変わるし、やっぱり実践することで上手くなっていけると思うんですよね。家でチマチマ練習しているだけじゃ、なかなか上手くならないじゃないですか。だから、去年習得したことをもっと本格的に採り入れていって、ベースの振り幅を広げていければいいなと思っています。

――今作のリリースが待ち遠しいですし、3月から始まる全国ツアーも楽しみです。

【JIRO】去年の秋に行ったツアーは『UNITY ROOTS & FAMILY,AWAY』(2002年9月発売)の全曲を演奏するという内容で、コーラス隊やストリングスなどを入れて、今までとは少しテイストの違うライブにしたんですね。その緊張感がすごくよかったんですよ。メンバー全員すごくやり甲斐があって、「あの空気感を持って次のツアーも回りたいね」という話になったので、今度のツアーも今までどおりの感じではないライブになると思います。

――というと?

【JIRO】何て言えばいいんだろう…。“スマートなGLAY”というか…そういう雰囲気のライブにしたいんですよね。ライブのセットリストは、メンバーそれぞれにライブでやりたい曲を数曲ずつ出してもらって、集まったもので僕が構成しているんですが、今回は「スマートなGLAYを見せるツアーにしましょう」と伝えて曲を集めたので、わりと「ワァーッ!楽しい!」という曲だけではない印象です。ただ…結果的にどうなるかは、まだわかりません。久々に行く場所もあるので、GLAYらしいライブをした方がいいのかもしれないし。そこはツアーまでにしっかり練っていきたいですね。いずれにしてもいいツアーになると確信しているので、楽しみにしていてほしいです。

取材・文/村上孝之
撮影/小松陽祐(ODD JOB)

■61thシングル『HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-』収録内容
▼CD
01. 限界突破
02. THE GHOST
03. 海峡の街にて
04. GONE WITH THE WIND(Gen 3)
▼Blu-ray・DVD
・限界突破 Music Video
・限界突破 Studio Session
・episode of HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2003-2023

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  • シングル「HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-」をリリースしたGLAY・JIRO (C)ORICON NewS inc.
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