沖縄県の粟国島と渡名喜島の小中学校で4月から1、2カ月間、学校給食が提供できなかった。県職員の栄養士を派遣できなかったことが原因だ。県学校栄養士会は「離島の栄養士は2、3年で人事異動になる。離島勤務は引き受け手が少なく再発の可能性がある」と懸念する。(南部報道部・又吉健次)

 県内の学校勤務の栄養士(栄養職員、栄養教諭)は138人。離島勤務の希望者が少ない理由は、家族がいる場合は子どもの転校が伴うことや、親の介護などで生活拠点を移すことが難しいためだという。

 加えて沖縄本島から距離があり、交通の便が悪い離島は二の足を踏む傾向がある。粟国、渡名喜はともに船便が毎日あるが、島から沖縄本島に渡った場合は日帰りできない。翌日の午前便を利用すると学校到着は午前11時~正午前だ。栄養士にとって調理現場への不在は異物混入防止や衛生管理を間近で確認できないため精神的な負担が大きい。

 県学校栄養士会前会長の根川文枝さん(62)は「離島勤務に応じられる人を優先的に採用するなど配慮があってもいい」と語る。また、学校教員の応募資格45歳以下と比べて35歳以下と低い「栄養職員」の年齢制限の引き上げによる人手不足の解消、離島の交通の便の改善を求める声もある。

 県教育庁学校人事課は「給食を提供できなかったことは申し訳ない気持ちでいっぱいだ。離島、へき地の人事異動については、栄養士だけでなく事務員や管理職も含めて欠員が生じないようにしたい」とする。

 栄養士の不在が再び起きた場合、栄養バランスに配慮した献立作りや食育を学ぶことができないといったしわ寄せを児童、生徒が被り、保護者は弁当を作るという負担が生じる。

 粟国小中に娘が通う母親は「島の子にも本島の子と同じ権利があるはず。離島だから行政サービスを受けられないことは悲しい」と嘆く。その上で「福祉も医療も離島は大変なことは事実。住民が我慢することは分かるが、サービスを提供する側の行政が住民に負担を強いるのは駄目」と言い切った。