アルゼンチンの日系3世で、祖父母が沖縄県出身の新門(にいかど)春助マルティンさん(36)が、中城村和宇慶でシーサー工房「新(ミー)シーサーMi shisa」を構えている。旧来の沖縄のシーサーにこだわらず、独特のシーサーを制作し、平和の大切さと新型コロナの一日も早い収束を訴えている。「新」は新門の新と妻香乃実さん(28)の旧姓の新垣の頭文字。

 新門さんの祖父新助さんは旧与那城村(現うるま市)、祖母藤子さんは旧大里村(現南城市)の出身。戦前に移民としてアルゼンチンに渡航した。

 2017年、県海外移住者子弟研修で来沖し、故郷のうるま市で3カ月研修。陶芸工房でシーサー作りを体験した。新助さんから常々「シーサーは悪病からの守り神」と教わり、家々の屋根で悪霊へにらみを利かせていることを心に留めていた。

 19年、海外留学生を受け入れる県の事業で再来沖し、県立芸術大学に入学。「陶芸」「染色」「織物」「歴史」などを学びながら、首里城、中城城跡、勝連城跡などを訪ね、祖父母の足跡をしのんだ。特に戦跡を訪ねた際、ガマ(洞窟)で自決を強いられ無念の死を遂げたウチナーンチュに心を痛めたという。

 17年の来沖で知り合った、青年海外協力協会(JOCA)沖縄事務所に勤める香乃実さんとの遠距離恋愛を成就させ、今年4月3日の「シーサーの日」に結婚。2人でシーサーを通して平和の尊さを伝えたいと、香乃実さんの実家「フクギパン」の一角に昨年7月、工房を構えた。

 モチーフは屋根シーサーが基本。ガマで無念の死を遂げた人々を包む鎮魂の祈り、御霊(みたま)を守るシーサーの所作などを意識している。社会が明るく平和な世界になるよう願いを込めた「波乗りシーサー」「ジンベエザメに乗ったシーサー」「あんどんシーサー」などもあり、バラエティー豊かだ。

 沖縄に来てみると、祖父母から聞かされていた屋根シーサーが少ないことに少しショックを受けた。日本国籍も取得し「名実ともにウチナーンチュになった」と胸を張る。

 販売はオーダーメードが基本だが、既製品も取り扱う。工房の情報はインスタグラムから。(翁長良勝通信員)

■工房のインスタグラム
https://www.instagram.com/mi.shisa/