沖縄県粟国村で初の村営歯科診療所が東に完成し、長年、神戸市で開業してきた入船忠史医師(76)が診療を始めている。村では20年余り診療を続けた歯科クリニックが2015年に撤退したため、治療で沖縄本島に通う村民の負担解消、健康向上につなげようと開設した。医院と住居の2階建てで施設建設費は約8700万円。1月26日に開所式があり、青空の下で真っ白な建物がお披露目された。

 歯科医がいない間、村民は泊まりがけで沖縄本島に出るしかなく、子どもが治療したいときには保護者も仕事を休む必要があった。高齢者も入れ歯の相談や調整ができずに不便を強いられていた。新たな診療所に、村民からは「新型コロナ禍で本島にも行きにくい。島で治療が受けられれば助かる」との声が上がっている。

 以前から離島医療に関心があったという入船医師。沖縄県歯科医師会に問い合わせると、ちょうど粟国村で歯科診療所を建設する話を聞いた。

 19年に下見を兼ねて島を訪問したところ、歴代の粟国中学校3年生が卒業制作として残した防波堤に描いた絵が目に入った。絵の中の「一期一会」の言葉に縁を感じ、その日のうちに移住を決めた。入船医師は「島民と話し合いながら、治療方針を決めたい。何かあったらいつでも相談してほしい。主役は島民」と力強く語った。

 診察時間は午前9時~午後1時と午後2~6時、休診日は水曜と日曜祝日、土曜午後。問い合わせは同診療所、電話098(988)2955。(宮本真理通信員)