沖縄県立芸術大学・大学院で、漆器の保存修復について授業する土井菜々子さん(中央)=2021年9月14日(土井さん提供)
沖縄県立芸術大学・大学院で、漆器の保存修復について授業する土井菜々子さん(中央)=2021年9月14日(土井さん提供)

首里城火災、工芸品も多大な被害 修復に険しい道のり 職人の育成が課題

2021年10月26日 9:25有料
社会・くらし

[再建の現在地 首里城火災2年](中)

首里城の「見せる復元」が苦戦 ツアーの人数がゼロの日も から続く

 火災で被害を受けたのは建物に限らない。沖縄の歴史や文化を物語る美術工芸品も多大な損失を被った。

 被害状況などをまとめた「首里城美術工芸品等管理委員会」によると、火災により染織、書跡などの美術工芸品約390点が焼失。残った約360点も修復が必要な状態になっている。

 沖縄美ら島財団は、修復作業を担う職人を選定。本年度から作業が始まった。

 だが、道のりは険しい。どの美術工芸品の修復も時間がかかり、資料が十分ではない作品もある。これに加えて、修復を担える職人はごくわずかだ。

 約280点の修復が必要な漆器。火災で長時間の熱にさらされ、その後急速に冷えたため、木が収縮して亀裂が入ったりしている。

 修復を任されている土井菜々子さん(48)は、15年ほど東京で修業し、約10年前から沖縄で漆器の修復を続けている。国内では漆器の修復職人は10人もいないといい、貴重な人材だ。

 小麦粉と漆を混ぜた天然の接着材を亀裂に流し込み、固まるまで1週間ほど待つ。熱で浮き上がった螺鈿(らでん)細工の貝や漆塗膜(うるしとまく)を竹ひごで抑えるなど地道な作業を繰り返す。本年度は4点の修復を並行で進めるが、1年近くかかる予定だ。

 土井さんによると、琉球漆器は本土の漆器に比べて研究開始は遅かったが、本土復帰の頃から本格的な研究が進んでいる。ただ、土井さんが火災で被害を被った漆器の修復に携わるのは初めてで、手探りの部分も多いという。...

【あわせて読みたい】

首里城が焼失して3年。あの時、沖縄タイムスで事件・事故を取材する社会部の警察担当記者(通称・サツ担)2人は沖縄のシンボル焼失を目の当たりにした。泣き崩れる住民、消火活動に奔走する消防隊員、原因究明に尽力する捜査員―。当時の取材メモを読み直し、写真とともにあの日を振り返る。

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