2018年に「サンゴの村宣言」した沖縄県恩納村は、ダイビングショップや事業者個人を対象に「サンゴ礁保全の取り組みをしているか」などを評価・認定する国際的なガイドライン「グリーン・フィンズ」の普及に向け動いている。村によると、ガイドライン認定を目指すショップは約10店舗あるが、査定する「評価者」が国内にいないのが課題。村は、評価者の選定と研修に向け準備を進める。

 「グリーン・フィンズ」はダイビングショップや船舶事業者、個人に対し、ダイビング・シュノーケリング時に「サンゴの上に立たない」「フィンで海底の砂や沈殿物を巻き上げない」「魚の餌付けをしない」などを定めたガイドラインや国内外の環境関連の法律や規制、慣習など15の行動規範の順守を求めている。

 村は現在「評価者」育成に向け、県内外のNPO職員や会社員など4~6人を研修候補者に挙げている。候補者でもある村SDGs推進事務局の積田彗加さん(30)は「新型コロナウイルスの感染状況を見ながら、基準を運用するイギリスの財団から経験者を呼び、候補者研修を秋ごろに始めたい」と意気込む。

 「他国と比べ、日本は海を守る取り組みも制度も不十分」と指摘するのは、村真栄田でダイビングショップを経営する吉村秀信さん(53)。東京都出身でバイクの部品販売などを手掛けていたが、39歳で沖縄に移住しショップをオープン。19年に個人で「グリーン・フィンズ」認定を受けた。

 開店後に驚いたのが、外国人観光客の環境保護に対する意識の高さ。「何でサンゴの上に人が立っているんだ」「魚に餌付けするなんて信じられない」。クレームを受けた吉村さんはダイビングのマナーを学び、パラオの友人を通じて「グリーン・フィンズ」を知り、取得を決めた。

 経営するショップの認定も目指す吉村さんが心掛けているのが、客に行動規範やガイドラインを説明し、納得した上で海に入ってもらうこと。「事業者が環境保護に取り組まないと、海はすぐ駄目になり、自分の首を絞める。恩納の自然をどう守るかをお客さんに理解してもらうのも、サービスの一つなんです」(北部報道部・国吉聡志)


 「沖縄」と聞いて連想するものの一つに「海」がある。多様な生態系を形成し重要な観光資源でもある一方、地球温暖化の進行やごみの漂着、赤土の流入など深刻な環境危機にも直面している。国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)に関連した7月の沖縄タイムス特集は、「海洋と水」がテーマ。17の目標のうち「海の豊かさを守ろう」「安全な水とトイレを世界中に」の視点から、海の保全や水環境の改善に取り組む自治体や企業、団体を紹介する。