沖縄県恩納村にある沖縄科学技術大学院大学(OIST)で、黒人差別根絶に思いを強くしている人がいる。米イリノイ州出身で、OISTの技術員として働くステファン・エステルさん(25)=写真。今年5月に米国で起きた黒人男性が白人警官に暴行され死亡した事件の動画を見て、恐怖を感じたという。エステルさんは「米国だけでなく世界全体の問題。肌の色に対するステレオタイプな見方をなくそう」と訴えている。(北部報道部・西倉悟朗)

 エステルさんが沖縄に来たのは今年4月。OISTで専門分野の機械工学を生かし、実験で使う機械などの開発に携わっている。事件の動画を初めて見た時の恐怖心は「被害者が自分や家族だったかもしれず、誰に起こるか分からない」という思いから。「黒人が複数で飲食店に入っただけで白人の店員に警戒されたり、フードをかぶって街を歩くだけで警察に声を掛けられたりした」という自身の経験にも重なった。

 事件を受けて県内であった抗議集会やOISTの学生らで集まった場に参加。自身と似た経験をしていた黒人の学生も多く、動画投稿サイト「ユーチューブ」でそのことを発信したりもした。

 「沖縄では受け入れられている気がしてうれしい」と笑顔で話すエステルさん。沖縄の人にも伝えたいと、こうメッセージを送る。「黒人はみんなラップが好きとか、バスケットボールがうまいとか、メディアも含めて勝手なイメージでラベルを貼る人たちがいる。でもそれぞれ違う職に就き、それぞれの家族がいる。あなたが持っているかもしれない『黒人』というステレオタイプをなくそう」