【宜野湾】米軍キャンプ瑞慶覧の西普天間住宅地区跡地(約50・7ヘクタール)で8日、アーチ橋の完成式典があり、「安仁屋(アンナ)橋」と命名された。安仁屋はキャンプ瑞慶覧の用地として戦後に全域が接収され、姿を消した集落。市民から寄せられた116案の中から「安仁屋橋」が選ばれた。同地区に琉球大学病院と同大学医学部が開院開学する来年1月に、橋の利用が本格化する。(中部報道部・平島夏実)

 安仁屋橋は全長90メートルで片側1車線。自転車や歩行者も通れる。歩道の一部にハート形の琉球石灰岩を埋め込んだ。

 橋の下には南城市の「ガンガラーの谷」に似た貴重な地形「イシジャー緑地」が残る。鍾乳洞が陥没してできた「枯れ谷」で、雨が降ると水がたまる。絶滅の恐れのある貝類、コケ、爬虫(はちゅう)類などが確認されているため、埋めないで済むようにアーチ橋にした。谷の両岸には古墓群がある。

 イシジャーを保護するため、橋脚は一本もない構造。建設過程でも支柱を立てず、橋を溶接しながら空中で組み立てる県内初の「ケーブルエレクション・PCT工法」を用いた。溶接はボルトで固定するよりもさびにくく、見た目も滑らか。工期は約3年で、橋の総工費は約27億円(うち9割は国の補助)だった。

 式典で宜野湾市の松川正則市長は「西普天間を基地跡地のモデル地区として開発するのになくてはならない橋。ロケーションも良く、長く愛してもらえると思う」とあいさつ。「安仁屋橋」と命名した安仁屋郷友会の仲村博会長と、銘板を揮毫(きごう)した市在住の和田のぞみさんに感謝状を贈った。

 安仁屋橋を通って宜野湾市伊佐の国道58号に抜ける道路(全長1750メートル)は12月末までに完成予定。そのうち国道58号に近い部分(全長35メートル)はキャンプ瑞慶覧内にあるため、日米が共同使用する。