俳優の椎名桔平が、WOWOWの「連続ドラマW 事件」(8月13日放送開始)で主演を務めた。ある殺人事件の裁判を通じて、事件に至る関係者の苦悩や隠れた真相が明らかになっていく法廷劇。「犯罪は遠い世界の出来事ではない。誰もが一歩間違えれば当事者になりうるのだ、と実感する物語です」と力説する。

 原作は1977年に出版された大岡昇平のベストセラー小説。ドラマ化に当たって舞台を現代に移し、2009年に始まった裁判員制度を盛り込んで物語を再構成した。

 椎名が演じたのは、元裁判官で弁護士の菊地。過去の事件で心に傷を負い、しばらく刑事裁判を離れていたが、恋人の姉を刺殺したとして逮捕された青年と出会い、弁護を担当することになる。

 劇中では、公判前整理手続きも含めた刑事裁判の過程がつぶさに描かれる。椎名も役作りのため公判を傍聴し、現役の弁護士や裁判官に話を聞いた。「それぞれの立場から、ものの見方や法廷での立ち居振る舞いを教えていただきました」

 専門用語を交えた長ぜりふには苦労したという。「全4話なのに、台本が信じられないくらい厚い。われながら、よくやりました」と苦笑した。

 「人が人を裁くことの責任」が作品の重要なテーマ。近年では裁判に人工知能(AI)を活用しようとする動きもあるが「最終的な判断を下すのは、やはり生身の人間であってほしいですね」。

(取材・文=共同通信 高田麻美、撮影=佐藤まりえ)(共同通信)