[意外と知らない「有事」の話](18)

 台湾から111キロの与那国町。仮に台湾有事が起きれば最前線の自治体だ。にもかかわらず住民の生命、財産を守る国民保護計画の準備は間に合っていない。

 「階段を1段上ったところだよ」

 町課長補佐の男性は苦笑交じりに話す。明らかにマンパワー不足が原因だ。国民保護業務を担うのはこの課長補佐1人だけ。防災分野も兼務し「消防だけでも大変」と嘆息する。

 町職員は全員で76人。定員より約10人少なく、どの課も「ぎりぎり」で回している。

 2017年の「町国民保護計画」の作成を経て、現在は避難方法や手段を定める実施要領「パターン編」を作っている。月内に公表予定だが、手応えはないという。海上封鎖や悪天候で船が往来できないなど、「考えるほどパターンはある。階段に終わりがない」。...