紅芋が腐る病気「サツマイモ基腐(もとぐされ)病」の感染拡大が主な原因で、紅芋の生産量が減り、沖縄県内の加工業者や卸業者に影響が出ている。「紅いもタルト」を製造・販売する御菓子御殿(読谷村、澤岻英樹社長)が契約する農家の2021年度の出荷量は、基腐病が広まる前の18年度と比べて7割減となった。同社の久田友次郎・業務執行役員兼営業本部長は「今後、観光客の回復とともに需要が増えれば、紅いもタルトの生産が追いつかない可能性もある」と懸念した。(政経部・國吉匠)

 カビ(糸状菌)によって引き起こされる基腐病は、農薬などによる完全な防除は難しいとされる。18年に沖縄本島南部で国内初確認されて以降、27都道県に拡大している。

 紅芋はサツマイモの一種。農林水産省の統計によると、沖縄の加工食品用のサツマイモの21年生産量は18年比52%減の1674トン(概算値)になった。県糖業農産課は、作付けする作物を転換する農家が相次いだほか、雨が多い気象状況も重なり、減産になっていると説明した。

 御菓子御殿へ出荷する農家は、サトウキビの生産に転換する農家が増えた。21年の出荷農家数は18年に比べ7割減になっている。基腐病が発症した畑でキビを生育しても、病気にかかる恐れはないという。

 久田氏によると、県農業研究センターなどの研究でウイルスフリーの苗も開発されているが、量産に至っていない。「苗の大量生産を図るなど、農家や加工業者への支援を県や自治体に求めたい」と話す。「たまたまコロナ禍が重なり、在庫があるため表面化していないが、今後(商品の)供給不足になる可能性もある」と危惧した。

 県内外の業者向けに紅芋のペーストを販売する沖縄ハム総合食品(読谷村、長濱徳洋社長)も同様に被害を受けている。21年度に農家から出荷された紅芋は、18年度に比べて約3~4割減った。今年は春先にあった長雨の影響もあり、作付けした農場から全く収穫できない契約農家もいる。

 担当者は「紅芋の加工品を商品としている業者間で、生産農家の取り合いになっている。契約する農家を開拓し、出荷量を確保するのが大変」と嘆いた。