しびれは本来、感じることのない感覚で異常感覚のひとつ。じんじん、ピリピリと人によって感じ方はさまざまですが、「しびれている」という感覚が起るということは、身体に何らかの異常がある証拠です。しびれは身体から発せられた警戒信号と捉えることができます。
では、どのようなことが原因でしびれという異常感覚が起こるのでしょうか。まずは神経の圧迫です。神経は圧迫に弱く、長期間圧迫され続けると筋肉や血管にまで異常が出てくることがあります。全身に広がる末梢神経は、圧迫を受けた部位がしびれますが、神経根(首などの神経が集まる場所)が圧迫を受けると、その部分から伸びる神経が走っている部位にしびれが発生します。手がしびれるからといってその部位だけに原因があるのではなく、別の場所に要因がありしびれるということも考えられるのです。神経障害として糖尿病(り病期間が10年以上)の方に手足のしびれが起こる場合もあります。次に血行障害です。血管が細くなって血液の流れが悪くなりしびれを感じます。例えば、高齢者に多い閉塞性の動脈硬化は、動脈が狭くなりしびれが発生します。そして一番気をつけなければいけないのが、顔や右半身・左半身のしびれです。これらは中枢神経系(脳や脊髄)に異常がある場合で、即時に精密な検査が必要になります。
他にも、病気の兆候、栄養素の摂取不足、椎間板ヘルニアやむち打ち症など骨や関節の怪我・病気など原因はさまざまです。また、ストレスなどが原因で皮膚が過敏になり、通常感じることのない刺激に過剰反応してしまうなども考えられます。
しびれが特定の部位に1〜2ヶ月間継続する場合は、重篤な病気が潜んでいる可能性もあります。必ず医師に相談し、受診・検査することをお勧めします。「しびれだからそのうち治る」「しびれなんて大したことではない」といって放って置かず、身体に異変が起こっていることに気づくことが大切です。
前述の通り、しびれの原因はさまざまな要因が考えられます。ビジネスパーソンに起こりやすいしびれの一例を、原因となる病気としびれの症状を挙げながら見てみましょう。
手根管症候群 |
利き手の手のひら側の親指、人差指、中指がしびれる症状で、手首の横に走っている靭帯が正中神経を圧迫することによって起こります。40代〜50代の女性に多く見られ、妊娠時や出産後、甲状腺の機能低下などが原因で、ホルモンのバランスが関係していると考えられています。 |
肘部管症候群 |
ひじには尺骨(しゃっこつ)神経という手首の屈曲を行う神経があり、この部分が圧迫されると、小指と薬指の小指側やひじにしびれを感じます。パソコンを長く使用し続けた場合などに発生しやすく、悪化がひどいと、じん帯を開く手術などをしなければならないこともあります。程よく手を休めることで悪化を防ぎます。 |
足根管症候群 |
ヒールの高い靴をよく履く女性や長時間の立ち仕事をする人に多い症状で外反母趾と合併して起こる場合が多く見られます。内くるぶしの後ろにある脛骨神経が圧迫されて起こる場合のほか、外傷によって発症することもあります。 |
胸郭出口症候群 |
なで肩の20代〜30代女性に多く、鎖骨あたりを通る神経や血管の隙間を圧迫して、手や腕のしびれが起こります。手や腕を頻繁に使う職業や、腕を常時挙げている美容師や教師に多いと言われています。 |
ビタミンB1欠乏症 (脚気など) |
近年若年層に多く見られる病状で、足にしびれが起こる脚気がそのひとつです。コンビニの弁当やジャンクフードなど偏った食生活を続けたためビタミンB1が不足しがちになり、末梢神経障害によってしびれが発生します。忙しい生活の中でもバランスの良い食事をとることが、最良の予防です。 |
アルコール性 ニューロパチー |
食事をせず飲酒する習慣がある人に見られ、手足のしびれが主ですが定型はなく、しびれる部位は移動します。アルコール分解時に必要な栄養素の不足や吸収障害で起こると考えられているので、他の器官に負担をかけないためにも、アルコールを摂取する際は必ず食事を取るよう心がけが必要です。 |
バージャー病 |
閉塞性血栓性血管炎とも呼ばれ、発症者のほとんどが喫煙者の病気で20代〜40代の男性に多く見られます。末梢血管の炎症により血管が狭くなってしまい、血流障害が起こり手足にしびれが発生します。禁煙はもちろん、適度な運動が悪化を防ぐことにつながります。 |
※上記の病気は一例です。症状が当てはまるからといって自己判断はせず、必ず医師にご相談ください。