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日本のセブンイレブン店舗 わずか1日の休業宣言が大問題に

仕事中毒の日本が注目する争いで、苛酷な労働時間に不満をのべたところ、フランチャイズ契約を解除すると本部に脅されたと、オーナーの松本実敏さんは語った

東大阪のセブンイレブンオーナー松本実敏さんは、元旦に休業したいと求める。Credit...Noriko Hayashi for The New York Times

Ben Dooley and

東大阪−コンビニチェーンのセブン-イレブン店舗のなかで、もっとも有名なオーナー松本実敏さんは、24時間、週7日の営業のコンビニ業界で、突拍子もないことを希望した。それは、1日休みをとることだった。

そのため、セブン-イレブンは、彼から仕事を奪おうとしていると語った。

11月、これまでろくに休憩をとらず14時間以上働きづめの松本さん自身、そして、2名の従業員らが、日本で最も重要な休日の元旦に休業すると宣言した。しかし、12月20日、セブン–イレブン本部は、彼の店舗へのクレームが全国のどの店舗よりも多く寄せられており、10日間以内に改善できなければ、契約を解除すると通知した。

「本部は元旦に休ませたくないために、やっていることなのだろう」と、実名を公表して、24時間営業を要求する本社に対して反旗を翻した松本さん(57歳)は語った。

「もし、私に休業を許せば、他のオーナーもあちこちで声を上げ始めるでしょう」

松本さんの今年2月の時短営業の決断がきっかけとなり、他店のオーナーらからも時短の要望が上がった。しかし、本部の変更の対応は遅く、抗議として元旦休業を決めたのですと、松本さんは話した。

松本さんの孤独な訴えは、24時間営業のコンビニ業界のビジネスモデルについて、全国的な議論を巻き起こすきっかけとなった。日本の人口減少により、働き手の確保が困難となるなか、会社貢献として、時に致命的な長時間労働が強いられる国のなかで、(コンビニ業界の)過酷な労働時間は、議論を呼んだ。

政府統計によると、厚生労働省は、昨年、業務上の理由で246件の入院や死亡したという届出申請を認定している。その統計によると、小売業界は、申請が多く出される業界のうちの一つでもある。また、568人が、仕事疲れが原因で自殺している。

しかしながら、コンビニ3大チェーンのセブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートは、日本の客が求めるようになった24時間営業を変更することに前向きではなかった。

松本さんに提示された通知文書には、セブン-イレブンに78件のクレームが寄せられたと示されていた。セブン–イレブンの声明では、契約解除の通知は、それらのクレーム、そして、本部役員への批判をソーシャルメディア上で行ったことによる「信頼関係の破壊」によるものであると説明している。

松本さんと支援者らは、労働を搾取する会社に抵抗する代名詞となった人物を、見せしめにしようとする動きだと受け止めている。

「オーナーたちは、団結できないのです。なぜなら、団結しようとしたその瞬間から、狙われ、圧力をかられるのです」と、組合員を募集し、企業に抗議して、業界の慣習を変えようと闘っている小さなグループ、コンビニ関連ユニオンの幹部、鎌倉玲司氏は説明する。

1920年代にテキサス州で創業したセブン-イレブンは、1991年から日本の企業に経営されており、現在、日本国内の約5万5千店のコンビニのうち、約40%を占める。

それゆえに、セブン-イレブンは、日常生活において不可欠の存在となっている。政府も、コンビニは、道路や水道のような、インフラとみなしている。コンビニは、地方の観光の振興にも貢献し、いざというときに逃げ込める安全な場所として、地域の治安面でも期待されている。自然災害時には、店舗は救援物資の物流拠点として協力が求められる。

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東大阪のセブンイレブンオーナー松本実敏さんは、元旦に休業したいと求める。Credit...Noriko Hayashi for The New York Times

セブンイレブンの店舗の多くは、松本さんのような個人オーナーによって経営される。本部は、常に商品棚におにぎり、たばこ、弁当などを絶やさず陳列できるよう、店舗と物流ネットワークの利用を提供する。ブランドを守り、全国一律の顧客サービスを提供するための営業マニュアルが決められている。

その契約のなかで、フランチャイズ店舗は、24時間、週7日、年365日、開店するよう定めている。

セブン-イレブンによって開発されたビジネスモデルは、長年、成功を遂げてきたものの、約10年ほどの間に、崩壊しはじめた。

成長を目指し、セブン-イレブンと競合他社は、マーケットシェアを奪い合うために、店舗数を拡大し、消耗戦を繰り広げてきた。新規開店した店舗が、同じエリアの既存店舗の利益を奪うようになった。

同時に、日本の労働人口は減少が続き、賃金は上昇が進み、頼れるスタッフの確保が困難になっていった。スタッフの給与を負担するオーナーは、自らシフトに入って働くことを余儀なくされた。

セブン-イレブンにとって、店舗の開店コストは限定的である。しかし、加盟店の数は、伸びていない。

元工務店経営者の松本さんは、より安定した収入を求めて、2012年に開店した。開店当初から、フード商品の発注や在庫量について、店舗担当者の提案に従わず、本部に主張をしていたと語った。

2018年5月に、一緒に働いていた妻が亡くなり、頼りにできるスタッフの確保に苦労するようになった。必死のあまり、大学生の息子にも戻ってきて支援を頼まざるをえなかった。

それでも、松本さんは連日12時間、ときにはそれ以上働き続けた。

ついに、今年2月に、営業時間を午前6時から深夜1時までに短縮すると宣言したのだ。

本部は、それを契約違反と指摘。彼は、契約を解除され、これまでの多額の投資を失いかけた。さらには、契約違反の違約金として、1700万円を支払うよう要求された。

松本さんは、それでも時短営業を断行した。契約解除を突きつけられ、事情をメディアに公表した。

これまでも運動家たちは、長年にわたり、コンビニオーナーの苦境に世論の注目を集めようとしてきた。しかし、松本さんのケースはとりわけ、世間の注目を浴びた。メディアが店に押し寄せ、全国のコンビニオーナーからの支持の電話や手紙が舞い込んだと、松本さんは話した。

そして、松本さんは同じくらいのクレームも受けたと認めている。松本さんの主張によると、店の前の小さな駐車場に長時間車を停めていたと人々と口論になり、また、店のトイレを閉鎖した。その対応は、サービスが行き届いている日本では、ほとんど聞いたことのないことである。利用客が綺麗にトイレを使わない、また、時には鍵をかけて長時間トイレに閉じこもるという理由によるものだ。過去には、店舗担当者と相談して、問題を解決してきたと、松本さんは説明した。

しかし、今回は事情が違う、寄せられたクレームを見せて欲しいと頼んでも、本部はわずかしか開示せず、多すぎてすべては見せられないと語った。

セブン-イレブンは文書で、「オーナー様にたいして、加盟店契約に違反する行為について繰り返し説明した」にもかかわらず、是正する姿勢が見受けられないと説明する。

松本さんは、これらのクレームには、自分の行動が影響しているのでないかと懸念を持っている。彼の事情が拡散しはじめると、人々はツイッター上で、会社のイメージを傷つけたとして、彼を攻撃しはじめた。グーグルマップ上の松本さんの店舗のレビューは270件に上り、そのほとんど全ては、彼の人格攻撃をしている。それらの多くは、松本さんがメディアに出るようになって以降書きこまれている。

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松本さんの店舗。全国5万5千店のコンビニの3分の1以上をセブン–イレブンが営んでいる。Credit...Noriko Hayashi for The New York Times

セブン-イレブンのオーナーや従業員らのなかには、松本さんを尊敬していると、個人的には伝えるものの、自らの店舗を危険にさらすものはほとんどいない。

にもかかわらず、世論の非難に押され、業界が変化をする望みもでてきた。大手チェーンは、いくつかの改革策を示している。セブン-イレブンでは、いくつかの店舗で時短営業の実証実験を行い、また、直営50店舗で元旦を休業し、スタッフに休暇を与えると発表した。

松本さんは、他のオーナー店舗も連帯を示して、休業してくれることを望んでいる。

日曜日に会社の代表と面談したものの、双方は合意に至らず、セブン-イレブンは、脅しをしてきているとして、法的手続きを取る予定だと話した。

既存のシステムはもはや続かない、と指摘し、オーナーらが強くでない限りセブン-イレブンは変わらないだろうと語った。

「いま立ち上がらなければ、未来はありません」

Ben Dooley reports on Japan’s business and economy, with a special interest in social issues and the intersections between business and politics. More about Ben Dooley

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