損害保険ジャパン株式会社 保険金サービス企画部 火災新種グループ 特命課長 小山洲一郎氏

損害保険ジャパン株式会社
保険金サービス企画部
火災新種グループ
特命課長

小山洲一郎氏

「NTTコミュニケーションズであれば、フリーダイヤルから応対するAIまでワンストップで対応してもらえます。そうした点も魅力となり、最終的にボイスDXを選びました」

損害保険ジャパン株式会社 保険金サービス企画部 火災新種グループ 課長代理 水谷朱里氏

損害保険ジャパン株式会社
保険金サービス企画部
火災新種グループ
課長代理

水谷朱里氏

「AIのほうが話しやすい、または損害保険の内容から人には話しづらいということでAIを選択する。そういったニーズがあることが確認できました」

 

課題

100%近い応答率が求められる損保業界のコンタクトセンター
大規模な自然災害発生時にコールが殺到し、応答率が低下

130年を超える歴史を持つSOMPOグループの中核企業として、個人用自動車保険や個人用火災総合保険、地震保険などを展開し、損害保険市場で大きな存在感を示しているのが損害保険ジャパン株式会社(以下、損保ジャパン)である。同グループでは、共通戦略の1つとして既存事業のデジタル化推進、そしてデータを活用した事業戦略を掲げており、損保ジャパンにおいても業界に先駆けて自動車事故のAI自動修理見積もりサービスを提供するなど、DXに向けた取り組みが積極的に進められている。

そんな損保ジャパンが近年課題としていたのが、大規模災害が発生した際のコンタクトセンターにおける応答率の低下である。応答率とはコンタクトセンター運営における重要な指標の1つで、着電した電話にどれだけオペレーターが応答できたかを示す。この応答率について、多くのコンタクトセンターは90%程度を目標としているが、損保業界では100%は当たり前でさらにお待たせしないことが求められる、と小山洲一郎氏は話す。

「損保業界のコンタクトセンターは、事故や被災したお客さまの最初の連絡を受ける最重要セクションです。災害などが発生し、不安な状況の際、契約している損害保険の会社に電話をかけたら通じないということになれば、お客さまの不満は大きくなってしまうでしょう。そのため、どういった状況でも、災害時だからこそ100%の応答率を維持し、しかもお待たせしないことが大きな使命となっています。

一般にコンタクトセンターは応答率や、平均応答時間などでお客さまとつながる品質をKPIとしていますが、このような取り組みは応答率とか平均応答時間という概念を変えるものです。これにより昨今、消費者庁も問題にしている悪質な修理業者への注意喚起や優良業者の紹介など、受付特化型からソリューション提案型に応対を変革したいです」(小山氏)

応答率100%を維持するべく、損保ジャパンでは電話受付のための十分な回線数と設備、そして人員を確保してコンタクトセンターである事故サポートセンターを運営しているが、ときには想定を上回るコールが発生するケースもある。たとえば、台風などの大規模自然災害により、多くの顧客が一斉に事故サポートセンターに発信するといった場面である。実際、2018年に台風による大規模災害が発生した際、コンタクトセンターのキャパシティを上回る着信があり、電話をかけてもつながらないという苦情が多数発生していた。

応答率をより安定させるために、オペレーターを増員するという手段もある。しかし、損害保険のオペレーター業務には、保険に関する高度な知識が求められるうえ、労働人口が減っている現在、人手だけに頼る方法には限界があるといえる。

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対策

コンタクトセンターにおける電話応対にAIを活用
サービス選定では実績や安心感、サポート面を評価

この課題を解消するために、損保ジャパンで検討されたのがAIによる電話応対である。大規模自然災害の発生などによってコンタクトセンターに大量の着信があっても、AIが応対できれば、たとえオペレーターの数が足りなくても、応答率の低下を防ぐことができる。

これを実現するためのソリューションとして選ばれたのが、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)が提供する「COTOHA Voice DX® Premium」(以下、ボイスDX)だ。ボイスDXは、フリーダイヤルやナビダイヤルといった音声サービスに、NTT Comの言語解析AI「COTOHA®」やRPAといった技術やサービスを組み合わせ、業務プロセスを自動化し、DXを推進するソリューションである。

図 コンタクトセンターにおけるAIの活用

図 コンタクトセンターにおけるAIの活用

図 COTOHA Voice DX® Premium 概要

図 COTOHA Voice DX® Premium 概要

ソリューションの選定では、ほかのベンダーのものも候補に挙げられていた。しかし小山氏は、いくつかの理由からボイスDXを選択したと話す。

「別部署でお客さまとの通話内容をテキスト化するためにNTT Comのソリューションを使っていたため、実績がありました。加えて、NTTグループならではの安心感がありました。そもそも今回のシステムは、災害発生時の大量のコールに対処することが目的であり、災害時でも安定して稼働することは極めて重要なポイントでした」(小山氏)

小山氏はさらに、フリーダイヤルを含めて、NTT Comがワンストップで対応できることも選定理由として指摘した。

「仮にほかのベンダーのソリューションを選定した場合、フリーダイヤルからAIにうまくつながらないといったことが起これば大問題になってしまいます。しかしNTT Comであれば、フリーダイヤルから応対するAIまでワンストップで対応してもらえます。そうした点も魅力となり、最終的にNTT ComのボイスDXを選びました」

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効果

実証実験でオペレーターと遜色ない電話応対と評価
AIのチューニングにより高い認識精度を実現

今回のシステムは、顧客が専用フリーダイヤルで事故サポートセンターに電話し、ガイダンスで対話型AIによる保険受付を選択すると、氏名や電話番号、被害状況などをAIがヒアリングして受付が完了するフローである。続けてヒアリングした内容がAIによってテキスト化され、基幹システムに自動連携するという形である。

導入するにあたり、先に損保ジャパン社内向けのPoCが3回に分けて行われた。NTT Comはその3回のPoC後に結果を分析し、顧客の発話が適切にテキスト変換できるよう音声認識AIに細かい調整が行われている。小山氏は、PoCを重ねることにAIによるテキスト化の精度が向上していることが確認できたと語った。

「最初のPoCと最後のPoCでは、数字などの認識精度がまったく違いました。今回のように、AIのチューニングや学習が大きなポイントになる場合は、できるだけ早く取り組み、実績を積んでAIを育てることが重要だと実感しています。そうしなければ、なかなかAIを使ったお客さま向けのサービスを提供することができないためです。今回の取り組みは業界初ですが、いち早くNTT Comと取り組めて良かったと思います」(小山氏)

社内向けのPoCを終えた後、実証実験として一般の顧客も利用したが、ここでも特に問題が発生することはなかった。水谷朱里氏は「通常のオペレーターと遜色ない対応ができた」と評価する。

この実証実験では、AIならではのニーズがあることも確認できた。

「お客さまがオペレーター対応とAI対応のどちらを選ぶ際、オペレーターを選択するお客さまがほとんどだと思っていたのですが、AIを選択する方も15%程度いらっしゃいました。AIのほうが話しやすい、あるいは損害保険の内容から、なかなか人には話しづらいということでAIを選択する、そういったニーズがあることが確認できました」(水谷氏)

今回のPoCや実証実験の結果を受け、損保ジャパンでは今後の本格展開に向けた検討を進めている。損保ジャパンが目指す「応答率100%」のコンタクトセンターは、きっと顧客に安心を与えるに違いない。

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導入サービス

COTOHA Voice DX® Premium

オペレーターの電話応対業務をAIが一気通貫で実行する自動応対ソリューション。

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損害保険ジャパン株式会社

損害保険ジャパン株式会社

事業概要
2020年4月、社名を「損害保険ジャパン株式会社」に変更。SOMPOグループの中核会社として、お客さまの安心・安全・健康に資する最高品質のサービスを提供し続けることで、持続可能な社会の実現に貢献することを目指している。

URL
https://www.sompo-japan.co.jp


(掲載内容は2021年8月現在のものです)


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