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2018年バックナンバー

雑記帳

佐川前国税庁長官の国会における証言

 平成30年3月27日、衆参両予算委員会にて、佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が実施されました。
 
 佐川前国税庁長官が「自分が刑事訴追を受ける恐れがあるから証言は控えさせていただきます」という場面がありました。
 
 自白の強要を禁止するために定められた黙秘権の行使です。
 
 議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律には、以下の定めがあります。
「4条 証人は、自己又は次に掲げる者が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのあるときは、宣誓、証言又は書類の提出を拒むことができる。」
「6条 この法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、3月以上10年以下の懲役に処する。」
 
 一般の方は、わかりにくいかも知れませんが、憲法38条1項の「何人も、自己に不利益な供述を強制されない」という黙秘権の定めがありますから、国会の証人喚問における証言拒絶は、自白の強要を禁止するために定められた黙秘権の行使として当然のことです。
 
 そして、証言を拒絶したことをもって、佐川前国税庁長官が、犯罪にかかわっていることを認めたも同然と考えるのも間違いです。
 
 法曹関係者(裁判官・検察官・弁護士)は、黙秘権を行使したことをもって、有罪を認めたのも同然という考えはしません。
 
 黙秘権はなぜあるのでしょうか。
 
 自白の強要の禁止ですね。
 
 その昔は、黙秘権などありませんでした。
 
 黙秘権を明確に認めたのは、1641年のイギリス、星室裁判所や高等宗務官裁判所であったとされています。
 
 従前、イギリスの星室裁判所(The Court of Star Chamber)や高等宗務官裁判においては、職権宣誓の制度がありました。
 
 被告人に宣誓をさせ、黙秘すれば法廷侮辱罪となり、偽証をすれば偽証罪になります。
 
 被告人には極めて酷な制度です。
 
 被告人が犯罪を犯していたと仮定します。
 黙秘をすると法廷侮辱罪で有罪となります。
 犯罪を犯していないと証言し、犯罪事実が他の証拠により認められた場合には、当該犯罪事実+偽証罪で重く処罰されてしまいます。偽証罪がこわくて、犯罪の自白をすると、自白をもとに有罪とされてしまいます。
 
 結局、被告人が罰せられないのは、犯罪を犯しておらず、犯罪を犯していないと証言した場合のみになります。
 
 いかにも、理不尽で、被告人に酷だという批判を受けて、イギリスの星室裁判所や高等宗務官裁判において、職権宣誓の制度を廃止しました。
 廃止には、相当な、社会運動や騒乱があったことは想像に難くありません。
 
 「自己に不利益な供述を強制されない権利」=「黙秘権」が認められるようになったのは、このときからと一般に解されています。
 それが、後に、諸外国に取入れられました。
 今でも、黙秘権がない国があるのは、残念ながら事実です。
 
 また、前述の通り、被告人が黙秘した場合、否定しないのは有罪だからだと心証をとることも許されません。
 
 そのような心証をとったのでは、黙秘権を認めた意味はなくなってしまいます。職業裁判官は問題ないとしても、裁判員は不安です。
 
 なお、佐川前国税庁長官が、安倍晋三首相や菅義偉官房長官、麻生財務相、秘書官など官房などから改ざんの指示がなかったと明確に答弁したのは、自信があったのでしょう。
 
 ただ、起訴には、各委員会の告発が必要ですが、官房と佐川前国税庁長官との電話の通話履歴など、客観的な偽証の証拠が出てくる可能性もあります。
 
 平成30年度の予算は、平成30年3月28日の参議院の本会議において可決成立しています。
 
 予算成立後は、予算委員会で審議する必要もなくなります。テレビカメラも入りません。
 
 ただ、公文書の改ざんの問題は深刻です。
 
 自民党は、森友学園への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざんの真相究明に向け、有識者らによる第三者機関と、国会での特別委員会の設置を検討する考えを表明しています。
 行政文書改ざんに罰則を設ける公文書管理法の改正にも前向きな姿勢を示しています。
 速やかに、措置がとられるべきでしょう。
 
 なお、再発防止ですが、経緯がすべてわかる「電子決裁」制度の全部導入(一部、導入されています)がなされるべきでしょう。案外、再発予防策は簡単です。
 
 
 また、犯罪が成立するかどうかは、大阪地検の捜査にまつべきでしょう。
 
 安倍晋三首相は、平成30年3月28日の参院予算委員会で、佐川前長官の証人喚問を受け、「書換えについて私は全く指示していないと申し上げてきた。あとは国民の皆様がご判断いただくことだと思う。今後も説明責任を果たしたい」と語りました。
 
 参議議員選は来年あります。
 
 また、世論調査の結果、安倍首相が、平成30年9月の総裁選不出馬あるいは総裁選前の総裁辞任がありえます。
 
 安倍首相(総裁)が任期満了まで総裁を務めた場合は、自民党の党則に従い、地方票も含めた党大会で総裁が選任されますが、任期満了を待たずに総裁を辞任した場合は、やはり自民党の党則に従い、党大会ではなく国会議員のみによる「両院議員総会」で後任が決めることができます。
 
 総理総裁の地位を禅譲するために、任期満了前に総裁を辞任するという選択の可能性が高いでしょう。確実に票が読めます。
 自民党が下野したときに離党し、また、後ろから弾をうつようなまねをする石破茂元幹事長を後任にするわけにはいきません。
 
 また、大阪地検の捜査次第では、麻生副総理・財務大臣の辞任、さらに、安倍首相の総辞職があるかもしれません。
 
 北朝鮮、アメリカによる鉄鋼とアルミの関税、あと、ロシアによるロシアの二重スパイ暗殺未遂事件により、EU20ヶ国が、ロシアの外交官を追放するなど一触即発の状況にあることなど問題は山積しています。
 
 国政の停滞は許されません。
 
 
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