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現実味帯びる習氏「終身支配」 個人崇拝と忖度強まる懸念も

 【北京・坂本信博】11日閉幕した中国共産党の重要会議、第19期中央委員会第6回総会(6中総会)で習近平総書記(国家主席)の終身支配がいよいよ現実味を帯びてきた。2030年代まで習氏の時代が続く可能性があり、悲願の台湾統一にも腰を据えて取り組むとみられる。中国は長く集団指導体制を堅持してきたが、習氏への個人崇拝と忖度(そんたく)が加速する恐れもある。

 12年に総書記に就任した習氏は「反腐敗運動」(汚職撲滅)を看板政策に掲げ、国民の求心力を高めると同時に政敵を次々と排除。16年の6中総会で歴代指導者のうち毛沢東、〓小平、江沢民の3氏にだけ使われてきた「核心」に位置付けられた。18年には憲法を改正して国家主席の任期制限(2期10年)を撤廃し、終身支配を可能にした。

 香港紙の明報は5日、消息筋の話として、上海市トップの李強・同市党委員会書記が来秋の党大会までに中央の要職に就き、後任には重慶市トップの陳敏爾・同市党委書記が就任すると報じた。ともに習氏に近く、李氏は李克強首相の後任候補の一人。習氏が最高指導部や地方のトップを自分の側近たちで固め、党大会で3期目入りを確実にする狙いがあるとみられる。

社会統制強める指導部

 習指導部は最近、IT業界や芸能界、教育界、不動産業界、メディアなど社会の各分野で統制を強めている。かつて毛氏が発動して中国を大混乱に陥れた文化大革命(1966~76年)の再来とみる人もいる。

 ただ、北京の外交筋は「文革は、毛氏が自らの失策で失った権力を奪回するために発動し、反対派を粛清した。圧倒的権力を手にした習氏が『革命』を起こす必要はない」と指摘。長期政権を見据えた習氏が米国との覇権争いに備え、産業や社会の構造を共産党の目指す方向に沿う形へ整える狙いがある-と分析する。

 外交筋は「習氏は毛氏や〓氏のようなレガシー(政治的遺産)をまだ残せていない。台湾統一を実現できれば歴史に名を残せる」とも語る。習氏がトップを兼ねる中国人民解放軍は軍創設100年の27年までに、アジア太平洋地域で米軍と均衡する軍事力を確保することを目標に掲げる。台湾統一への布石とみられ、国際社会は対応を迫られる。

人気呼ぶ「習時代の象徴」

 毛氏に権力が集中した教訓から〓氏が敷いてきた集団指導体制は、事実上の終焉(しゅうえん)を迎えている。中国各地の展示施設では、歴代指導者で毛氏と習氏だけを別格に扱う傾向が強まっており、7月の党創建100年の記念行事でも、習氏が毛氏と並び立つ指導者と印象づける演出が目立った。

 今月上旬、習氏が地方幹部として17年間勤務した福建省と北京を結ぶ飛行機の機内には、白酒(バイジュウ)「習酒」の広告が並んでいた。

 習酒は習氏とは無関係で、貴州省の習水県が産地のためその名が付いたが、習氏にあやかり人気が急上昇。売上額は10年間で7倍近く増え、今年は120億元(2160億円)を見込む。北京の男性会社員(52)は「習時代の象徴として贈答用に重宝している」と話す。

 この秋、中国各地で深刻化した電力不足は、習氏が掲げる二酸化炭素(CO2)排出量削減目標達成のため、地方幹部が競い合うように火力発電所の稼働率を低下させたことが一因とされる。中国のメディア関係者は「権力が個人に集中すると周囲の忖度が強まり、習氏の意向とは別の形で社会に悪影響を及ぼす恐れがある」と懸念を口にした。

※〓は「登」に「おおざと」

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