震災遺構「阿蘇大橋」保存へ 熊本県「地震のすさまじさ後世に」
5年前の熊本地震で崩落した阿蘇大橋(熊本県南阿蘇村)を震災遺構として保存するため、県は今年秋から、峡谷の中腹に残る橋桁の一部を岩盤に固定する工事を始める。本年度内に完了させ、村に管理を移管する方針。
阿蘇大橋は2016年4月16日、熊本地震の本震で全長約206メートルの橋桁が崩落。阿蘇市の大学生大和晃(ひかる)さん=当時(22)=が犠牲となった。
橋桁は、今年3月に開通した新阿蘇大橋の約600メートル上流の峡谷に今も残り、対岸から当時のままのアスファルトの路面や、折れ曲がり、引きちぎられた鋼材を見ることができる。
県によると、保存工事の予算は2000万~3000万円程度。夏までに工法や設計を決め、工事に着手する。村は17年に橋桁を「震災遺構」に選定しており、今後は橋のたもと周辺を見学スペースとして整備する予定。
県は、村や益城町などに点在する震災遺構58カ所を、巡りながら見学できる「回廊型フィールドミュージアム」と位置付けている。県観光交流政策課は「熊本地震のすさまじさを伝える貴重な遺構として後世に伝えたい」としている。 (古川努、小川俊一)