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想定外の原発事故、判断材料限られていた

東京ウオッチ

官房副長官として危機対応に当たった福山哲郎氏

 東日本大震災が発生して11日で10年の節目を迎える。当時の菅直人政権の官房副長官として、東京電力福島第1原発事故の危機対応に当たった福山哲郎立憲民主党幹事長(59)が西日本新聞のインタビューで、原発事故で浮かび上がった課題や、立民が目指す「原発ゼロ社会」についての考えを語った。(聞き手は鶴加寿子)

東電から上がる情報は断片的

 ―10年前の原発事故の対応を振り返って、大変だったことは何でしたか。

 「原発政策は『原発事故は起こり得ない』という前提で成り立っており、福島第1原発事故は全てにおいて想定の範囲外でした。想定外に対処するために情報を集め、判断をし、(対策を)決めなければならなかった。それが多岐にわたっていたことが最も大変でした。加えて判断を間違えると住民の命と健康に関わるので、厳しい判断をせざるを得なかったことも非常に印象深く残っています」

 ―判断をする上で重視したことは何でしたか。

 「危機対応は官邸が原理原則を決めて判断をするわけですが、限られた情報の中で、その判断根拠を説明しなければいけません。震災の翌日ごろ、首相だった菅直人さん、官房長官だった枝野幸男さんと『少なくとも原発事故に関する避難は1分でも1秒でも早く』『避難範囲はより広めに』『情報は隠さない』という3点を確認したことをよく覚えています。ただ東電や(原発の規制当局だった)原子力安全・保安院などから上がってくる情報は非常に断片的でした」

 ―情報が官邸に上がらない原因は何でしたか。

 「そもそも原発事故の発生を想定していないので、どの情報を上げ、どの情報を上げないかという取捨選択の基準が、省庁や東電の中で曖昧でした。長らく事故の全貌が見えず、何が有効な情報なのか判断しにくかった面もあると思います。さらに『原子力ムラ』のいんぺい体質もあったと思います」

「直ちに影響ない」他の説明浮かばない

 ―官房長官の枝野氏が、事故で飛散した放射性物質について「直ちに人体に影響を与えるものではない」と説明したことが国民の不安や政府不信を招きました。

 「私は事前の打ち合わせに同席しましたが、専門家に聞いたところ、『そういう表現しかできません』との話でした。私は科学的な見地に基づく正確かつ率直な言い方だと思っています。いまだに他の説明は思い浮かびません」

 ―菅義偉政権が掲げた2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の目標をどう思いますか。

 「その目標が出たことにより、『原発は発電時に二酸化炭素を排出しない』という原子力ムラの主張が復活してきています。気候変動対策として原発を推進するというのは非常に筋が悪い議論です。原発事故によって今なお避難している方も多い。『脱原発』を掲げながら気候変動対策を進めるべきだし、それらを両立できる技術力が日本にはあるはずです」

「原発ゼロ」たやすい道のりではない

 ―立憲民主党は一日も早い「原発ゼロ社会」の実現を綱領に明記していますが、代表の枝野氏は2月の西日本新聞のインタビューで「原発をやめるということは簡単なことじゃない」と発言しました。原発ゼロへの慎重姿勢に転じたのですか。

 「慎重なのではなく、本当にやりたいと思っているから、やるのが難しいという問題提起をしているわけです」

 ―原発ゼロへの姿勢が後退していませんか。

 「後退じゃない。やらなければならないけれども、明日ゼロにできるとか、あさってにゼロにできるという話ではありません。原発立地自治体の財政状況や廃炉費用、原発で働く人たちの雇用など、さまざまな課題があります。原発に依存しない日本へと道筋をつけるには5年や10年もの時間がかかります。たやすい道のりではありません。しかし枝野さんや私には原発事故に向き合った者の責任として、原発のない日本をつくり、気候変動とも両立していかなければならないという確信を持っています」

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