豪雨被災の炭鉱電車修復 3両走行可能に 動態保存へ手入れ続ける
昨年5月に三井化学専用鉄道の運行が終わり、さらに同7月の豪雨で浸水して動かなくなった炭鉱電車5両のうち、3両が走行できる状態に復活した。新天地での活躍を願って修復した所有者の三井化学大牟田工場(福岡県大牟田市浅牟田町)は「(走行できる状態での)動態保存の要請に応じられるよう丹精込めて手入れしていく」と話している。
炭鉱電車は明治期から、大牟田市や熊本県荒尾市に点在した坑口などを結んだ旧三池炭鉱専用鉄道で石炭や客車をけん引した。閉山後は、同工場が炭鉱鉄道の一部を原材料の搬入などに利用してきたが、昨年5月7日に廃線になった。
工場には、送電線からパンタグラフで電力を受ける45トン車2両と、バッテリーで動く20トン車3両がある。昨年7月6日の豪雨で旧宮浦駅一帯が60~80センチ冠水。操車場や機関庫に停車していた5両は、車輪付近のモーターが冠水して動かなくなった。
同工場は、動態保存しやすい20トン車3両を順次解体して修復。モーターだけは専門業者に修理を依頼し、返却後に再度組み立て直し、昨年までに3両の修復を終えた。現在は週2回早朝に30分ほど慣らし運転し、月2回は機関庫で点検を続けている。30年以上整備を担当する山中寿一さん(63)は「健康な体で新たな引き取り手に渡してやりたい。親心のようなもんです」と話す。45トン車は静態保存を期待している。
復活した3台には100年以上働いたものもあり、炭都三池の歴史を今に伝える貴重な炭鉱産業の遺産でもある。同工場は、大切に動態保存してくれる引き取り手があれば寄贈する方針。現在、地元のNPO法人「炭鉱電車保存会」が、動態保存を求める要望書を両市に提出するため署名活動を展開している。藤原義弘理事長(61)は「炭鉱電車は地域の宝。動態保存してもらい、その価値を次代に伝えたい」と訴えている。 (立山和久)