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次世代へ核廃絶の道を 被爆連議長が誓う「最後の役目」

 被爆から75年。核兵器廃絶を願い続けた被爆地の思いが国際規範になった。批准が50カ国・地域に達し、来年1月の発効が決まった核兵器禁止条約。だが核保有国や「核の傘」にいる日本は条約に背を向け、実効性は見通せない。「ゴールはここではない」。被爆者や市民は条約発効の決定を歓迎しつつ、核廃絶の誓いを新たにした。

 「惨劇から立ち上がり、命を削った被爆者の成果。だが、まだやるべきことがある」。核兵器禁止条約の発効決定を受け、被爆者の川野浩一さん(80)=長崎県長与町=は口調に力を込めた。

 川野さんが議長を務める長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会(被爆連)など長崎の被爆者5団体は、条約採択前年の2016年、全ての国に批准を求める市民運動「ヒバクシャ国際署名」を開始。今年9月、県内での目標の50万筆に達した。だが開始時に団体の代表だった被爆者5人のうち、川野さんを除く4人が亡くなった。

 原爆で焼けただれた赤い背中をさらし、核兵器の非人道性を世界に訴えた谷口稜曄(すみてる)さん=17年に88歳で死去=も、その一人。長崎原爆被災者協議会(被災協)の会長だった。

 署名への協力を求め、2人で県庁を訪ねた時の姿が忘れられない。入退院を繰り返していた11歳上の谷口さんは、体調を気遣う川野さんの制止を振り切って交渉に向かった。「まさに執念、心を揺さぶられた」

 自身も5歳で被爆した。避難先で見た炎に包まれる長崎の街の光景は幼心に焼き付いている。この4年間、自治会などに署名を求めて回り、街頭に立ち続けた。一筆一筆に、平均年齢が83歳を超えた被爆者の「執念」がにじむ。高校生平和大使ら若い継承者も活動を支えた。

 条約が持つ意味について「核兵器を使わない、と宣言した国や地域が広がった点にある」と言う川野さん。一方で「条約だけで核兵器が無くなるとは思えない。被爆者が生きている時代に核なき世界が訪れることはないでしょうね」とも。

 署名は当初、目標に達した今秋で終了する予定だったが、期間を延長。条約発効の来年1月まで続け、一筆でも多くを国連に届けるつもりだ。

 せめて、次の世代に核廃絶の道を示したい-。それが、生き残った被爆者の「最後の役目」と信じる。 (西田昌矢)

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