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野口雨情、九州で練った詩稿 手帳19冊に数百点したため 雲仙・小浜温泉「肌に湯の香がほんのりと」

 「シャボン玉」や「七つの子」「赤い靴」など、今も親しまれる童謡を作詞した野口雨情(1882~1945)が戦前、全国を旅した際に書いた手帳19冊に、これまで知られていなかった民謡詩作のメモが多数あることが分かり、雨情の研究者、東道人さん(70)=岐阜市=が近く九州に関する一部を発表する。「地名や言葉を集めて定型詩に完成させていく過程が見てとれる。雨情の貴重な詩のう(詩想の集まり)といえる」と話している。

 東さんは、雨情の全作品を集めた「定本 野口雨情 第5巻地方民謡」(86年)の編集に携わり、雨情の長男存彌(のぶや)さんから手帳の存在について聞いていたという。2015年に存彌さんが他界。今年8月に遺族から手帳を預かり、研究を始めたところ、雨情独特の難解な筆致で書かれ、定本には入っていない詩のフレーズなどが見つかった。19冊は大正末期から1938年ごろまでのものという。

 判読分から随時発表する予定で、今回は長崎県を旅行中に書いたとみられるメモや、その考察。小浜温泉(同県雲仙市)を詠んだ一節では「肌にほんのり湯の香が ほんのり 残る わたしや小濱の湯のかへり」と書いた後、「わたしや小濱の温泉がへり 肌に湯の香がほんのりと」があり、表現を練る様子が分かる。

 日付ははっきりしないが、雨情は34年9月18日から約1カ月間、詩作のため大分と熊本県を旅行したほか、同年11月19日からは長崎県内を巡っており、この頃書かれたとみられる。

 手帳には「向ふ天草 手を出しやととく 加津佐天草 刺し向ひ」「南風ふけ 有明湾の沖の 小舟の帆の蔭に 九十九島の松の葉に」など、他にも九州の地名が登場。こうした詩稿は数百点に上るという。

 東さんは「雨情が幼くして亡くなった2人の子を思う言葉も書かれており、新資料として価値が高い」と話している。「野口雨情の手帳を読む」と題して、13日発行の文芸同人誌「群系」第41号で発表する。

=2018/12/12付 西日本新聞朝刊=

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