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僕は目で音を聴く(2) 耳元で話しかけないで

 読唇術(どくしんじゅつ)は、私を含めて耳の不自由な人が相手の唇の形を読んで、話を理解することができるコミュニケーションの一種です。ただ相手によって、私たちの理解の度合いは変わってくるのです。

 例えば、唇の形が小さい方や顔が無表情の人、逆に表情をよく動かす人。ちなみに聴覚障害者によっては声を雑音のように感じる人もいて、私もそうなのですが、大きすぎる声、逆に小さすぎる声も分かりづらくなります。十人十色なので、理解も人によって異なってきます。

 読唇術は集中力が必要です。これはあくまで私の場合ですが、日によって理解できたり、できなかったりします。昨日は理解できたのに今日は理解できない、というのはよくあること。体調を崩していれば余計、分かりにくくなります。

 私が一番「天敵」だと思っているのはマスクです。相手がマスクをしていると、まず唇の形が読めません。声を頼りにして聞くことになりますが、1~2割程度しか理解できないことが多いです。話が長いと「筆談して!」とお願いしています。その筆談を面倒くさがる人、字が汚い人が相手だと、本当にお手上げ状態になります。

 最近はあまり知られていませんが、実は透明なマスクも販売されています。聴覚障害者にとってはうれしいのですが、値段が割高。ぜひ普及してほしいと願っています。

 もう一つ困っているのは、良かれと思ってでしょうが、耳元に近づいてきて大声で話しかけられること。お年寄りの方が多いですし、そうした光景もよく見かけます。私たちは唇を見たいのです。その唇が耳元に近づくので、唇を目で追いかけるのに正直、いつも疲れてしまいます。相手の優しさが逆に困ってしまい、気を使ってしまうケースです。

 聴覚障害者と会話するときは、その人に適したコミュニケーション方法を知り、理解していくことが一番の近道だと思います。(サラリーマン兼漫画家、福岡県久留米市

プロフィール 本名瀧本大介、ペンネームが平本龍之介。1980年東京都生まれ。2008年から福岡県久留米市在住。漫画はブログ=https://note.mu/hao2002a/=でも公開中。

※平本龍之介さんによる漫画「ひらもとの人生道」第1巻(デザインエッグ社発行)が好評発売中!

  =2018/04/12付 西日本新聞朝刊=

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