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(図35)
現在、環境省がロードマップ委員会をつくっております。私も一昨年から参加しています。この結果は皆さんもうわかっていらっしゃるかもしれませんが、さらに3.11以降、エネルギーが少なくなっていったところで、どういうふうにしてそれまでの結論を修正するかという議論をし、この3月に一応の結論づけをしたところであります。
この中で私たちとして一番注目すべきことは、規制導入という部分です。この中に書いていますように、外皮性能を基準化するという問題です。平成11年基準相当、これは新築住宅に関するものですが、新築時の段階的な義務化ということで、2020年までに段階的に規制化していくということに現在なっています。これはそのQ値の段階、昨年のロードマップ委員会でやっていたものよりもさらに厳しい基準となっています。今さまざまなところで、第4地域、第5地域ですと、Q値が2.7ですが、それより下にするということが規制として行われる。これに関しては、私たちJIAの環境行動ラボでは、別な動きもしています。伝統木造住宅がQ値の2.7を守れない。もしこういうのが法律化されていくと、そういう伝統木造をつくるなということかということになってきます。これに対して、伝統木造のほうからどこまで歩み寄れるのか、Q値をどこまで低くできる手法があるかという議論をしています。それに加えて、外皮のQ値以外には指標はないのかということで、もう少し総合的な指標のつくり方を考えてもらいたい。例えばゾーンとしてそれを評価するという方法も考えるなど、いろいろな提案をしているところです。
(図36)
先ほどは住宅でしたが、これは新築の建築物についての低炭素化のことです。ここでは新築物件だけを挙げていますが、同じように改修に関するところも大きなテーマになります。改修に関しては、国交省も腰が重いという状態にあります。インスペクションがしっかりできないということで、検証の方法を検討しています。改修で、断熱材を多少入れても全体のCO2は下がらないということが課題となっていますが、私はすこし違う意見です。私は何とかして半分の部屋でも改修できるならば断熱改修を、徐々に、順番に、部屋ごとにでも改修することが大切で、そういう場合でもインセンティブを与えてもらいたいと主張をしています。
(図37)
この図は、世界的なエクセルギーの専門家である宿谷昌則先生の温度や湿度に関する快適性に関する研究成果です。普通言われているような室温26度がいいということではなく、例えば暖房に関して言えば、実験によると、空気の温度は18度でよく、それを取り巻く周壁の平均温度が重要で、24度~25度ぐらいが一番活動的な場合には良いと言っています。もちろん、これはその人によりますし、着ている洋服あるいは活動の種類によっても違いますので、それぞれの場所によって違ってくるということですが。
(図38) 
夏はどうかということで、昨年やっと、実験の結果が出てきました。前提として湿度は65%~50%ということで固定されています。南の地域ではこれがもっと上がってしまうと、厳しいわけですね。湿度を固定した上で、温度は28度~30度ぐらいでもよろしい。ただし、気流速といっていますが、空気の流れ、1秒間に20センチ~50センチぐらいの流れがあると気持ちのいい空間になるという結果になっています。
(図39)

 

 

 

 

 

 

 

 

 理論的なことはそのくらいで、建築の実例を見ていただきたいと思います。
これは私が1989年に2度目に独立した後に、最初に設計した浪合村の村づくりです。浪合村というのは飯田から南に30キロぐらいで標高1000メートルを超す山地です。
そこは860人の寒村です。この村では、それまでの約20年間、観光立村と称して、ゴルフ場をつくったり、スキー場をつくったりしてきました。ところが、その結果、村の人たちには何も生きがいとなるようなものが生まれなかったということです。そこに焦点を当てた議論が1年半続けられました。その結果、「村全体が村民すべての浪合学校」という、どこにでもあるありきたりの自然も、そこに住んでいる人にとってはその人の生きざまを磨く学校なんだというキャッチコピー、コンセプトのもとに村づくりを始めました。 

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