豊竹咲太夫さんが死去　文楽太夫の人間国宝

人形浄瑠璃文楽の太夫（語り手）で人間国宝の豊竹咲太夫（とよたけ・さきたゆう、本名=生田陽三=いくた・ようぞう）さんが1月31日午前2時57分、肺炎のため東京都内の病院で死去した。79歳だった。

1944年、戦後の文楽を代表する太夫の一人、八代目竹本綱太夫の長男として大阪市で生まれた。53年に父の師でもある豊竹山城少掾（やましろのしょうじょう）に入門、竹本綱子太夫を名乗り、同年初舞台。66年豊竹咲太夫に改名した。

時代物から世話物まで芸域は幅広く2009年に演目の見せ場を語る太夫の最高資格「切場語り」に昇格。深い情をたたえた格調ある語りで16年以降、6年にわたりただ一人の切場語りとして活躍した。19年人間国宝に認定された。

20代で師と父を相次いで亡くした後も他の師匠には付かず自身の芸を切り開いてきた。父の名跡を継がず、自ら大きくした初代咲太夫の名で太夫人生を全うした。

若いころから歌舞伎をはじめ文楽以外の芸能の世界とも積極的に交流、共演。社交性を生かしテレビ・ラジオの出演やコラムなどの執筆活動を通じて文楽の普及にも貢献した。