ベースアップとは 基本給の水準を一律に引き上げ
きょうのことば
▼ベースアップ 企業が基本給の水準を一律に引き上げること。社員の勤務年数などに応じて給与を増やす定期昇給とは異なる。ベースアップ(ベア)は高度経済成長期に根付いた制度で、当時は物価上昇などで相対的に下がった賃金の回復が目的とされた。
基本給は業績が悪化した際に引き下げるのは難しく、基本給をもとに算出する社会保険料や残業代なども増えるため、多くの企業はベア実施には慎重だ。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長は「日本はデフレ状態が長く続きすぎ、ベアを実施せずとも定期昇給だけで実質賃金がプラスとなる感覚から企業経営者が脱却しきれていなかった」と指摘する。
政府が経済界に賃上げを呼びかける流れもあり、ベアを含む賃金改善の機運は大手企業を中心に高まりつつある。22年の春季労使交渉は連合の最終集計によるとベアを含む賃上げ率は3年ぶりに2%台を回復した。ただ、原材料高による食品や家電製品、サービスなど幅広い分野で値上げの動きが相次ぎ、足元の物価変動の影響を除いた実質賃金は前年を下回っている。
賃上げは賃金水準を一律に引き上げるベースアップと、勤続年数が上がるごとに増える定期昇給からなる。2014年春季労使交渉(春闘)から政府が産業界に対し賃上げを求める「官製春闘」が始まった。産業界では正社員間でも賃金要求に差をつける「脱一律」の動きが広がる。年功序列モデルが崩れ、生産性向上のために成果や役割に応じて賃金に差をつける流れが強まり、一律での賃上げ要求の意義は薄れている。