WBS卒業で振り返る 最高値までの3年(佐々木明子)
テレビ東京アナウンサー・佐々木明子のニュースな日々
3月末でWBSを卒業
春は新生活のスタート。期待と不安が桜吹雪に入り混じる季節だ。私もコロナ禍の最中の2021年春から担当した「WBS」を卒業。思えばこの3年間はまさに時代の大転換点だったと確信している。
新型コロナウイルス感染症という見えない恐怖が世界の動きを停止させた異様な時間だった。「Newsモーニングサテライト」での午前2時起きから、夜中2時に帰宅する真逆の生活に激変。皆がマスク着用で顔が見えず、何もかも手探り。従来の経済の「常識」もパンデミックとの戦いの中で変形していったのではないだろうか。
リーマン・ショックがあった米ニューヨーク支局赴任の4年間では、強い利上げは深い景気後退を招くということを、身をもって学んだ。米国はここ2年、あの頃以上の利上げを行い、高金利を維持。利上げの影響は半年から1年かけて出てくるといわれるが、最初の利上げから早2年。「それなのになぜ米国経済は冷え込まないのでしょうか」。番組内で幾度となく問いたこの言葉を今も使っている。
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最高値更新で「変わった日本」を新しいメディアで
世界的なインフレの要因はいろいろと指摘されるが、最も大きいのはパンデミックだ。世界が国を閉じ、物流が止まり、人々は家にこもり……。誰もいないニューヨークのタイムズスクエアの光景など、モノや経済が止まる恐怖感が映像から伝わってきたものだ。物流網の混乱から、モノの値段が急に上昇する中で勃発したロシアによるウクライナ侵攻。番組内で専門家に経済への影響を尋ねると、アクリル板の向こうから「エネルギー問題が深刻なインフレを招く」と顔をゆがませた。
予想通りの記録的な物価上昇と利上げが講じられたが、いまだ旺盛な消費は識者を困惑させている。抑え込まれていた消費意欲の爆発という声や、16.9兆ドル(21年時点)にも上る世界の財政支援の影響という見方も。コロナ禍や戦争で人々の人生観が激変したこともあるだろう。
そんな中でわくわくしながら取材した人工知能開発の米オープンAI。米国の強さだなと実感する。GAFAMはITバブル崩壊の中で成長したが、彼らもまた、コロナの空白の時間にも成長を加速させ世界のマネーを引き寄せている。
コロナ禍が変えた世界は、動けなかった日本をも変えた。1992年に入社して以降、「デフレの日本」という言葉を伝え続けてきたが、2月22日、日経平均株価がバブル期の最高値を更新。まさに「失われた30年」を取り戻した瞬間を、「配信」という新しいメディアで伝えられた。これは人生最高のプレゼントだと、かみ締めずにはいられなかった。
国際女性デーを前に、女性の生き方や健康について考えるイベントに参加。民放・NHKの7局のアナウンサーが集い、就職やキャリアのつくり方、生き方について語り合った。「特殊な会社員」としての立場のため、「分かる分かる! そうですよね!」と帰るのが惜しくなるほど盛り上がった。また次回を楽しみに。
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP(2024/3/21)
価格 : 840円(税込み)
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