速達専用 青い郵便ポスト、なぜ大阪に集中
古い町並みと関係か
設置27本、全国の7割
日本郵便に聞くと、郵便ポストは全国に約18万本設置されている。うち青ポストは「現在、39本しかありません」(広報室)。東京に6本、東海エリアが6本なのに対し、大阪市内は27本と約7割が集中する。特に船場や島之内など、古い商業地に数多く残る。
通信文化協会によると「青ポストが初めて設置されたのは1956年。戦前にできた紺色の航空郵便用ポストが前身とされます」。この色は空をイメージしたといわれ、速達用ポストの青色もその系譜を継いだようだ。
高度成長期、ビジネス需要を中心に速達の利用が拡大し、青ポストはオフィス街に次々と立てられた。「数や場所の資料は残っていません」(日本郵便)が、ピークだった70年代には全国に約400本あったとされる。
90年代、郵便物の大型化を受けて投入口を大きくし、速達用の投入口を併設したおなじみの2口ポストが登場。赤ポストがこの新型などに更新される一方、青ポストは姿を消しつつある。
ただ大阪の街角に残る青ポストを見ると、隣に新型の赤ポストが並んで立っているケースがほとんど。赤ポストを置き換えた場合でも、青ポストを撤去するとは限らないようだ。
「ものを大切に」気質が影響か
なぜ大阪だけ青ポストが多く残っているのか。日本郵便では「今回初めて知りました。理由はよく分かりません」。郵便史の研究者で組織する郵便史研究会なども「はっきりした理由は不明」。歴史的な経緯があるのか、大阪市史編纂(へんさん)所や大阪歴史博物館にも聞いたが、首をひねるばかりだった。
もともと大阪に多かったわけでもなさそうだ。大阪経済大学日本経済史研究所の田原啓祐研究員(日本郵便史)は「航空郵便ポストは東京80本、大阪は35本でした。青ポストも東京の方が多かったはず」と話す。
日本郵便によると、赤青を問わずポストの更新や撤去は、各地で集配を担当する拠点郵便局が独自に決めている。判断の主な目安は老朽化と利用状況だが、明確な基準はないという。
同社によると「青ポストの詳しい利用状況は不明」。ただ田原さんは「ポストは車が衝突しても郵便物を守れるよう頑丈な構造。耐用年数は長く、100年以上現役のものもあります」といい、老朽化だけで撤去するとは考えにくい。
青ポストが姿を消した例を見ると、近年では東京駅丸の内北口前にあったのが7年前、駅舎の復元工事に先立って撤去された。都内ではビル建て替えに伴う周辺整備での撤去例が他に複数あった。
大阪でも中之島郵便局前にあった青ポストが今年2月、局移転とともに撤去された。周囲の建物や街並みの変化が撤去のタイミングと重なっている。
「街区整備の際、スペースが無いなどの理由で青ポストだけ廃止される可能性はある」と田原さんは話す。東京より大阪に多く残っているのは、再開発されていない古いオフィス街が比較的多いからかもしれない。
一方、通信文化協会の井上卓朗主席資料研究員は「ものを大切にする大阪人気質が、使える間は有効利用しようとの判断につながっているのでは」と話す。
担当域内に8本と最多の青ポストを抱える大阪西郵便局に話を聞くと「利用者もあり、まだまだ使えます」とのことだった。日本の高度成長期を物語る貴重な歴史遺産として、これからも大切に使っていきたいものだ。
(大阪社会部 藤井将太)
[日本経済新聞大阪夕刊関西View2013年10月29日付]