強硬路線に不信任 イラン大統領に保守穏健派当選
【テヘラン=久門武史】イラン大統領選は開票の結果、保守穏健派で改革派の支持も得たロウハニ最高安全保障委員会元事務局長(64)が15日夜(日本時間16日未明)、当選を決めた。保守強硬派候補の序盤の優勢を覆し大勝。核開発でアハマディネジャド政権が招いた経済制裁や対外関係悪化に、有権者が不信任を突きつけた。対外強硬路線の修正を探るが、実際に核開発で譲歩できるかが焦点になる。
■最終盤に勢い拡大
内務省はロウハニ師が約1861万票を集め投票総数の50.7%を獲得したと発表。2位の保守強硬派ガリバフ・テヘラン市長(51)の約607万票に3倍以上の差をつけた。投票率は72.7%。任期は4年で、8月に就任する。
最高指導者ハメネイ師に近い保守強硬派候補が先行した選挙戦は、改革派候補の撤退で潮目が変わった。ロウハニ師は改革派を取り込み最終盤に勢いをつけた。事前審査で出馬が認められなかった保守穏健派の重鎮ラフサンジャニ元大統領に加え、改革派のハタミ前大統領の支持も寄与した。
ロウハニ師は当選後「穏健の過激主義に対する勝利だ」と宣言。「イランの権利を受け入れるなら、ふさわしい回答を得ることができる」と欧米に対話を呼び掛けた。
現状への批判票で当選したロウハニ師は、現政権の強硬路線を改め米欧との関係修復に動く可能性もある。選挙戦では現政権の核交渉を厳しく批判。制裁緩和に向け建設的な協議を訴えた。
■決定権はハメネイ師に
イランでは最高指導者ハメネイ師が国政全般の決定権を握る。大統領は行政権を持つにとどまるが、ロウハニ師に1800万以上の票を与えた民意は無視できない。制裁下の国民生活の疲弊を受け、一定の譲歩を認めて徐々に柔軟路線に転じる可能性はある。
ただ経済制裁を招いた核開発についてロウハニ師は継続する立場。核開発を続ける限りウラン濃縮能力は高まる。敵対するイスラエルなどは核兵器への転用を疑い、なお強い警戒感を抱いている。
2期8年のアハマディネジャド政権で核開発を巡る米欧との対立は悪化した。米欧は経済制裁を強化し、外貨獲得の柱である石油輸出は停滞。物価上昇率は30%、失業率は12%に高止まりしている。