ハチドリは、蜂よりも蛇よりも「ガ」に似ている
コスタリカ昆虫中心生活
ぼくはダニです…えっ、鳥ではないかって?
写真の中におります。さて、どこでしょう…。答えは後ほど下の写真で。
というわけで今回はダニの話…ではなく、前回(「チョロチョロ…ヘビのように舌を出すハチドリ」を参照)に引き続きこの鳥、ハチドリの話です。全部で6種のハチドリの写真を掲載しているのでお見逃しなく。
さて、世界で一番小さい鳥として知られるハチドリ。生息するのは南北アメリカ大陸で、アラスカにも南米の南の方にもいるけれど、たくさんいるのは中南米。あのペルーのナスカの地上絵にも描かれている。
日本語でハチドリと呼ぶのは、予想通り昆虫のハチ(蜂)の羽音に由来する。英語名ハミングバード(Hummingbird)も、ハミングには「ブンブン音をたてる」の意味があるから同じような感じだ。
では、コスタリカで話しているスペイン語ではどうかというと、ハチドリを「コリブリ」と呼ぶ。コスタリカ人の友達カルロスによると、「もしかするとラテン語のヘビ(colubris)に由来するかもしれない」とのこと。かつてヨーロッパからカリブの西インド諸島に移り住んだ人たちが、この「すばしっこくなわばり意識が強い、ちょっと攻撃的な鳥たちのことをヘビと照らし合わせたのかもね」と言う。
前回、ハチドリがヘビっぽいしぐさをすることを紹介したけれど、昔の人もハチドリにヘビを感じたのだとしたらとても面白い。
ところで、ぼくがハチドリを見ていつも思い浮かべる動物は、実はハチでもヘビでもない。蛾(ガ)だ。スズメガの仲間のホウジャクやオオスカシバは、ハチドリより少し小さめだが、ホバリングしながら花の蜜を吸うところがそっくり。コスタリカにもよく似たガが何種かいて、昼間に飛び回っている。
「ハチドリ」ならぬ、「ヘビドリ」? 「ガドリ」?
…やっぱり、「ハチドリ」がええわ~(笑)
さて、冒頭のクイズの答えですが、下の写真をごらんください。
最後に、ピソちゃんの様子です。先日、NHKの取材協力でカルタゴ県にあるタパンティ国立公園に出向いたときに、若い3頭のピソちゃんに出会った。こちらをあまり気にせず、夢中で地面を掘って食事をしていた。親離れして間もないのか、まだおぼこさが感じられた。(編注:おぼこい=「うぶな」「初々しくて未熟な」を意味する関西、西日本でよく使う言葉)
1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学でチョウやガの生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[Webナショジオ 2014年2月25日付の記事を基に再構成]
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