東証1部に昇格する銘柄を先買い 移行後の上昇を狙う
イベントに着目した投資で稼ぐ(下)
東証2部や新興企業向け市場のマザーズ、ジャスダックから東証1部に昇格すると、株価が大きく上昇することが多い。この現象に着目した中小型株限定の投資法が「東証1部昇格先回り投資」だ。
値上がりが起きる背景には投資信託の運用会社など、機関投資家の買いがある。「『投資対象は東証1部のみ』というルールを定めている機関投資家が買ってくるので、1部上場後に価格が大きく上昇する」。イベント投資で1億円を超す資産を築いた専業投資家のまつのすけさん(ハンドルネーム、30代男性)はこう説明する。そこで、昇格の可能性がある銘柄を先回りして買うわけだ。
1部昇格の兆しを察知する
この投資法のポイントは、東証1部に昇格する可能性のある銘柄を早期に見つけること。「昇格の"兆し"をつかめばいい」とまつのすけさんは指摘する。
他の市場から東証1部に昇格するには、いくつかの条件を満たす必要がある。そのために企業が取る特定の行動が、昇格を目指すシグナルになるとまつのすけさんは続ける。
「株主数800人以上」という条件を満たすために、企業がよく実施するのが「立会外分売」と「株主優待の新設・拡充」だ。立会外分売は、大株主の保有株を証券取引所の取引時間外で不特定多数に売り出すもの。小口に分けて売るので、株主の増加につながる。株主優待の新設や拡充も、それをきっかけにして個人投資家の購入が広がれば株主が増える。
一方、株式市場に流通している株数を増やすために行われるのが「株式分割」だ。文字通り株式を分割することで株数が増える。これらの動きは、企業が自ら適時開示情報で発信しているほか、日経新聞などのメディアでも確認できる。
「地方→2部→1部」のパターンに注目
まつのすけさんは「過去の例では地方市場からまず東証2部に移行して、その1年後に東証1部に昇格するパターンが多い」と話す。
地方市場から東証2部に移行した銘柄を定期的にチェックすると、1部昇格のシグナルを早期に見つける可能性が高まりそうだ。
(大松佳代)
[日経マネー2020年12月号の記事を再構成]