熊本豪雨で1人死亡、15人心肺停止 老人ホーム浸水
9人行方不明、1人重体
熊本県と鹿児島県で4日、猛烈な雨が降り、熊本県南部を流れる球磨川の10カ所以上で氾濫・決壊が起きた。同県芦北町で1人が死亡し、他に県内で15人が心肺停止、9人が行方不明、1人が重体となった。気象庁は午前4時50分から正午前まで大雨特別警報を発表し、両県の計11市町村が避難指示を出した。
熊本県によると、球磨川の氾濫で球磨村の特別養護老人ホームが浸水し、14人が心肺停止状態で見つかった。人吉市や八代市でも浸水によって住民が孤立し、陸上自衛隊などが救助にあたった。国土地理院の推定では浸水は深い場所で8~9メートルの可能性がある。
国土交通省などによると、球磨川の11カ所で川の水が堤防を乗り越える氾濫が起き、人吉市内では堤防が約20メートルにわたって決壊した。熊本、鹿児島両県で計23件の土砂災害が確認されている。
熊本県内では少なくとも431世帯、871人が避難所に身を寄せた。新型コロナウイルスの感染防止のため、各避難所では避難者同士の間隔を空け、消毒や検温、定期的な換気などの対策が取られた。
積乱雲が次々と帯状に発生する「線状降水帯」が熊本県を中心に形成され、同県天草市では1時間に98ミリの猛烈な雨となって観測史上1位を更新した。同県水俣市では降り始めからの総降水量が500ミリに達した。宮崎県西米良村で24時間降水量が380ミリ、鹿児島県さつま町で300ミリを超えた。
JR肥薩線の人吉駅など複数の駅で線路が冠水し、八代市の球磨川第一橋梁が流失した。九州新幹線は始発から熊本―鹿児島中央の上下線で一時運転を見合わせた。
九州電力によると、熊本県内で一時約8840戸が停電した。NTT西日本は熊本県南部で最大約2万8700の電話回線が不通になっていると発表した。
熊本県は陸上自衛隊に対し人吉市や芦北町などへの災害派遣を要請した。内閣府は同県球磨村や鹿児島県阿久根市など20市町村に災害救助法が適用されたと発表した。
球磨川氾濫、過去にも
熊本県南部を襲った記録的豪雨で氾濫した球磨川は最上川や富士川と並ぶ「日本三大急流」の一つとされ、過去にも繰り返し水害が起きてきた。
球磨川は同県水上村を源流とし、不知火海に注ぐ1級河川。支流の1級河川、川辺川が人吉盆地で合流し、山地に降った雨がすり鉢状の盆地に集まる地形となっている。
国土交通省によると、球磨川流域では記録に残るだけで過去400年間に100回以上の水害が発生。1965年7月には豪雨による氾濫で人吉市や八代市の市街地が浸水し、6人が死亡した。
今回の豪雨では、積乱雲が次々に発生し帯状に連なる「線状降水帯」が発生し、流域に大量の雨を降らせた。球磨川が人吉盆地を抜けた先、球磨村の渡地区にある国交省の水位計によると、3日午後1時に1.1メートルだった球磨川の水位は4日午前0時に3.16メートルに上昇し、午前6時には11.8メートルまで達した。
熊本県は4日午前、球磨川上流にある県営市房ダム(水上村)で貯水容量の8割を超える見込みとなったことから、緊急放流を行うと発表した。その後、雨が弱まる見込みとなったため、結果的に緊急放流は行わなかった。
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