神奈川県内自治体、市営住宅建て替えなどでPFI活用
PFI(民間資金を活用した社会資本整備)を導入する自治体が神奈川県内で相次いでいる。横須賀市や三浦市は市営住宅や公共施設などを建て替え、県も県営住宅でPFIの活用に動き出した。老朽化で建て替えなどが必要な公営住宅や公共施設が増えるなか、財政が厳しい自治体がコスト減と民間のアイデアを生かそうとPFIを活用している。
横須賀市は2019年12月、「本公郷改良アパート」の建て替え事業に着手した。約9600平方メートルの敷地面積に5~9階建ての住居5棟計260戸を新設する。元の建築物は築50年ほどが経過した全330戸の集合住宅。市による耐震診断で強度不足が判明してPFIでの建て替えを決定。青木あすなろ建設や地元不動産会社のウスイホームなどが約53億円で契約した。
公募には3陣営が応募したが、「余剰地を活用した福祉拠点やコンビニエンスストアを設けるなど行政にないアイデアを計画に生かせた」(同市都市部)という。さらに、市による積算に比べ1割ほどコストが抑えられたほか、市が建築専門の職員を増やさずに済むなどのメリットもあったという。
横須賀市は観光名所の「長井海の手公園(ソレイユの丘)」をPFI方式で整備するなどしてきたが、市営住宅にPFIを使うのは初の試みだ。公共施設のPFIは事業者が整備・運営を一体で担うケースが多く、事業者に利点が多い。「市営住宅の運営は指定管理者制度を用いるため、PFIが広がってこなかった」(同市)が、工期短縮や事業費削減、国庫補助が優先的に受けられるためPFIを導入した。今後も別の施設などでPFI活用を模索する。
三浦市もPFI方式で市の南下浦市民センターを建て替える。「子育て賃貸住宅」を備えた複合施設を建設する方針で、12月下旬をメドに事業契約を締結し、23年の供用開始を目指す。従来の市営住宅とは別に子育て世帯を想定した25戸分の賃貸住宅を新設し、人口減少が続く同市への移住・定住促進につなげる。
民間事業者の関心も高まっている。ミサワホームは同社初のPFI事業として、19年10月に藤沢市の公共施設を建て替える「藤が岡2丁目地区再整備事業」を着工。保育園や児童クラブなどの公共施設と小児科などを含めた民間施設「アスマチ藤沢」を一体整備し、21年4月に開業予定だ。
PFIの活用では地元建設業者などの参入をいかに促すかが重要となる。神奈川県は19年12月、横浜銀行や業界団体などと組み、県営住宅の建て替えでPPP(官民連携)やPFIなどを活用しやすくする「PPP/PFIプラットフォーム」を全国で初めて設立した。1月下旬からセミナーを開くなどして、地域の建設会社などに意義や事例などを周知する。同県では19~28年度に県営住宅28団地約7000戸を建て替える計画で、「実例を増やしながらPFIの導入を模索したい」(公共住宅課)としている。