香川 うどんだけじゃない 俳優 木内晶子さん(語る ひと・まち・産業)
地元で活動 魅力を再認識
■俳優や歌手として活躍する木内晶子さん(36)。2016年1月に独立し、Uターンして事務所を構えた。
「東京中心に活動していた頃は、帰郷といっても年に数日、実家に寄る程度。芸能活動だけを考えれば東京が便利だが、地元での活動も増やしたいと思った」
「独立後はさぬき映画祭の上映作品で高松市の離島、男木島を舞台にした『Lemon&Letter』に出演した。瀬戸内の美しい景色が印象的なこの作品は、幸運にも『ベルリン国際フィルムメーカー映画祭2017』に入選。故郷のPRに役立てたなら俳優冥利に尽きる。地元を舞台にした映画がもっと生まれたらいいなと期待している」
「今夏は地元のトライアスロン大会に初出場、完走した。最初は(主催者側の要請で)出発式に顔を出すつもりだったが、自転車で四国遍路をする体験を通じて友人が増え、『一緒に出よう』と盛り上がった。人々と交流したり地域を発信したりするイベントに選手として参加したことで、地元をもっと盛り上げたいとの思いが膨らんできた」
■地域活動のきっかけは、11年に俳優の要潤さんと共に香川県から委嘱された「うどん県副知事」だ。
「県内で映画の撮影をしている時に県庁の方から声をかけていただき、PR動画『うどん県。それだけじゃない香川県プロジェクト』への参加が決まった。うれしかった半面、副知事と聞き、責任のある肩書でプレッシャーも感じた」
「最初は映像を通じた活動だったが、徐々に県内イベントに参加する機会が増えた。最近は街中で『副知事頑張って』などと声をかけられることも増え、地元の温かさを感じる。上京した頃はヒトやモノの流れの速さに戸惑い、分からないことがあっても周りに助けを求めにくかった。気軽に意見を交わしたり協力し合えたりする人がいるのは、地元ならではのよさだ」
■地元に戻ってみて、少子化や人口流出などの課題を実感する一方、街中で生まれつつある新たなにぎわいに期待を持っている。
「このほど、母校の小学校で講演する機会があったが、私が通っていた頃に比べて生徒数が大きく減っていて驚いた。進学や就職で都会に出て行く若者も多いと聞く。時代の変化とともに少子化の深刻さを感じた。このままでは地域が弱ってしまうのではないかと心配になる」
「私自身、テレビの世界に憧れて高校生で上京したが、県内の活動が増えた今、毎日のように発見があり新鮮だ。芸能界以外にも交流が広がったことで、例えば特色ある企業が多いことを知った。普段気づいていないだけで、本当は地元で働くという選択肢が数多くあると感じた」
「市中心街ではアーケードが整備され、店舗も増えた。瀬戸内海の島々のアートも人気だ。自然や歴史などと街の距離が近く、時間をかけずに行き来できるのは都会にはない魅力だ。街中には最近、外国人を含め観光客が増えたが、彼らにももっと、こうした地方の良さに触れてほしい」
「香川の魅力はうどんだけじゃない。俳優の仕事も頑張りつつ、この先も様々な"表現"や分野を通じて、地元の皆さんと一緒に香川を盛り上げていきたい」
国際的イベントも盛ん
《一言メモ》高松市は人口約42万人の都市だ。高知、愛媛、徳島の四国3県へのアクセスが便利なことなどから国の出先機関や大手企業の支店が多く集まる。
観光スポットには全国有数規模の総延長2.7キロメートルのアーケード街を持つ中央商店街や、大名庭園で国の特別名勝の栗林公園、源平合戦で武将の那須与一が扇の的を射落とした舞台としても知られる景勝地の屋島などがある。
国際的なイベントも盛んだ。木内さんも参加したサンポート高松トライアスロンは2010年から始まり、今年初めて世界のトップエリートが集まるアジアカップを誘致した。3年ごとの瀬戸内国際芸術祭や4年ごとの高松国際ピアノコンクールもある。国際会議の誘致などを通じて都市ブランドの向上に取り組んでいる。
(高松支局 北本匠)