クロマグロ、大西洋で漁獲枠拡大 太平洋は絶滅危惧種
【ジェノバ(イタリア北西部)=御調昌邦】大西洋でのクロマグロの漁獲規制を協議する「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」は17日、漁獲枠の拡大を決めて年次総会を閉幕した。これまでの漁獲量削減で資源量が十分回復してきたためだ。一方の太平洋地域ではクロマグロの資源回復の取り組みが遅れており、日本の調達先が大西洋にシフトする可能性が出てきた。
クロマグロは本マグロとも呼ばれ、日本は世界で最もクロマグロの消費量が多い。水産庁のデータによると、2012年のクロマグロの国内供給量は3万トン前後で、このうち太平洋産が約6割、大西洋産が約4割を占める。大西洋では取ってきた魚を地中海で育てる「蓄養」が多く、日本も大量に輸入している。
大西洋地域で最大の漁場となる東大西洋・地中海では現在、全体で年1万3400トンの漁獲枠がある。13年にも漁獲枠を小幅拡大したが、今回は大幅な増加となる。
会議関係者によると、全体の漁獲枠として15年は1万6142トン、16年は1万9296トン、17年は2万3155トンとする最終案で決まった。全体の漁獲枠は3年間にわたり20%ずつ拡大することになる。
日本の割当枠は、一部の国への特別な漁獲枠を除くと8.5%で変わらず、15年は1345トンで前年比約200トン増える。同海域の漁獲枠が拡大すれば、欧州からの輸入を含め、国内のクロマグロの価格が低下する要因になりうる。
ICCATには日米を含む約50の国・地域が参加している。ICCATの科学委員会は10月に東大西洋・地中海のクロマグロ資源が回復しており、漁獲量を増やせるとの報告書を公表していた。
一方、太平洋クロマグロは国際自然保護連合(IUCN)が17日、絶滅の恐れがある野生生物を指定する「レッドリスト」の絶滅危惧種に加えた。
海外から消費国の日本に一段の資源保護を求める声が強まり、国際取引を規制するワシントン条約の対象になる可能性もある。国内では「予想していなかった」(東京・築地市場の卸会社)など驚きの声が上がっている。ただ「絶滅危惧」の度合いは3ランクのうち最も軽いため流通業者の間では「強い規制はかけられないのではないか」との見方も根強い。