福岡空港、遅れ頻発 滑走路1本…「混雑」指定
九州の空の玄関口、福岡空港の過密ぶりが深刻になっている。発着回数は定時運航できる目安を超え、発着便の遅延も頻発。国土交通省は発着制限も可能な「混雑空港」への指定を決め、第2滑走路の建設計画も動き始めた。インバウンド(訪日外国人)の需要に応える上でも、設備の増強が急務となっている。
日本郵便が1月、福岡市内で開いた再開発ビルに関する記者会見は予定より15分遅く始まった。同社幹部の搭乗便が「上空で待機を続け、着陸後に駐機場までたどり着くにも時間がかかった」(同社)ためだ。
福岡では今、出張者がヒヤリとする事例が増えている。滑走路が1本しかない福岡は、複数の滑走路がある羽田などを除くと発着回数は国内最多。2015年は約16万6千回(ヘリコプター除く)に達したもようで、定時運航できる目安の年16万4千回を超え、円滑な運用に支障が出ている。東京と福岡を毎週のように往復する九電工東京本社の猪野生紀代表は「何が起こるかわからず早めの便を予約している」と苦笑する。
国交省は3月27日に福岡空港を羽田や成田と同様の混雑空港に指定する。1時間あたり発着回数に上限の基準が設けられるほか、新規就航に国の許可も必要となり、発着増加に一定の歯止めはかかる。滑走路と駐機場の往来に使う平行誘導路の二重化も進め、18年度末をめどに発着可能回数を年6千回上積みする。
一方、就航希望は引きも切らない。15年に九州を訪れた外国人はクルーズ客を除き204万人。その7割近い139万人が入国する正面玄関に、この冬から春にもセブパシフィック航空やVエア、タイガーエア台湾などの就航が相次ぐ。そんな中で発着回数が限界となれば、インバウンド取り込みに水を差しかねない。
打開策として期待を集めるのは2本目の滑走路だ。国交省は運営権の民間委託で建設費を賄う方針を14年に表明。委託に福岡県・市が同意し、増設計画が動き出した経緯があり、24年度末の利用開始を目指す。
ただ増設すれば安泰とみるのは早計かもしれない。市街地に近い利便性と引き換えに、敷地拡張は困難。現在の滑走路に並行して造るため間隔は210メートルしかなく、両方同時に発着できないため、増設後の発着可能回数は年18万8千回どまり。飛行ルートの工夫などで21万1千回まで増やせるが、「騒音の及ぶ範囲が広がり、地元の理解が不可欠」(国交省)となる。
10年に13万回だった発着回数は、国交省の予測によれば35年ごろに18万回に達し、20万回を超える可能性もある。増設しても遠からず過密問題が再燃する勘定だ。地元経済界では「福岡で入国した訪日客が別の空港で出国する観光ルートの開発が必要だ」との声も上がり、北九州など近隣空港との分業構想もある。
(西部支社 岩崎航)