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日本は隠れた無人ヘリ大国 農業分野で普及

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 「最近、無人機のニュースをよく見ますね。そのうち、日本の空を飛び回る日が来るんでしょうか」。無線操縦の飛行機が趣味だという青年が事務所を訪れた。探偵、松田章司が「無人機は探偵業にも使えるのでは」と調査に乗り出した。

「なぜ無人機のニュースを目にする機会が増えたのかな」。章司はロボットや無人機を研究する千葉大学教授の野波健蔵さん(64)を訪ねた。「背景にはスマートフォン(スマホ)など電子機器の分野で起きたモーターや電池、センサーの技術革新があります」と野波さんは説明した。

軍需なく、開発競争は不利

最近、注目を集めたのが「マルチローターヘリコプター」という4~8個のプロペラを持つ機種。昨年末、米アマゾン・ドット・コムや国際物流大手の独ドイツポストDHLが宅配に使う構想を発表。指定した目的地まで自動航行し、荷物を届けた後は物流基地へ戻ってくる。「従来のヘリと違い、自分の3倍以上の重量を積めるので、流通革命につながる可能性がある」と野波さん。

「日本ではあまり見ませんが開発が遅れているのですか?」と章司が聞くと、「むしろ大型化の鍵を握るモーターの技術は進んでいます」と野波さん。「ただ、無人機やロボットは海外では民生用と軍事用を並行して開発するのが普通。軍需がない日本は予算や実験の面で不利なのです」

野波さんらはメーカーなどと産学官の共同研究グループをつくり、巻き返しを図っている。開発した無人機は、爆発事故を起こした東京電力福島第1原子力発電所の調査などに使われる予定だ。

「日本でも活用は広がっているのかな」。無人機のメーカーなどでつくる日本産業用無人航空機協会に問い合わせると、担当者が「民間が産業用の無人機を積極的に活用しているのは日本くらいです」と説明した。

無人機は米軍が使って有名になったが、実は日本も民生用では隠れた無人機大国。例えばNHKの人気ドラマ「あまちゃん」のオープニングの撮影にも使われた。「橋の調査などにも用途が拡大しています。ただ、一番普及しているのは農業分野ですよ」

無人ヘリが農薬まいた田んぼ ご飯3杯に1杯の割合

「農業で無人機?」。章司は農林水産航空協会(東京都千代田区)で、常務理事の斎藤武司さん(63)に話を聞いた。「実は、みなさんが食べるご飯の3杯のうち1杯は、無人ヘリが農薬をまいた田んぼでつくられています」と斎藤さん。同協会はもともと有人ヘリで農薬をまく業者などがつくった組織。ところが「田んぼ周辺の宅地化や、栽培形態の多様化で使う農薬の種類や量がまちまちになった影響で、広い面積に一度に散布する有人機は使いにくくなった」という。

そこで開発されたのが本物のヘリコプターと似た形状をした無線操縦ヘリ。小さく軽量なので小回りが利き、田んぼ1枚ごとに農薬をまくことができる。農家の高齢化に伴い、重労働の農薬散布ができる人が減ったこともあって急速に普及してきた。2013年度の普及機数は2550機(速報値)に達した。2000年度に比べて実に1.8倍に増えたことになる。

「今は国が進める"攻めの農業"への活用に期待が高まっています」と斎藤さん。これまでは水田に農薬をまく作業が中心だったが、無人機でタネをまいたり、肥料をやったりする技術の開発が本格化。実現すれば農作業を大幅に省力化でき、国際競争力も上がる。「将来は普及機数が今の2倍、5千機程度まで増えるかもしれません」という。

「大手メーカーは将来性をどう見ているのかな」。章司は産業用無人ヘリを製造するヤマハ発動機の事業開発本部UMS事業推進部長、石岡修さん(54)に話を聞いた。

ヤマハ発動機、16年ぶりに新製品

「昨年末に16年ぶりに新製品を出しました」と石岡さん。スマホなどに搭載されている本体の傾きを読み取るセンサー(ジャイロ)などを活用し、無人ヘリの飛行姿勢を自動で保つ機能を強化。旧型と比べて格段に操縦しやすくなったという。

「今後、どんな分野で使われそうですか」。章司が聞くと、「今は用途の90%以上が農業ですが、災害現場など人が近づけない場所の観測や警備、人手や時間がかかる測量などで活用が進むでしょう。積載重量の規制緩和も予定されているので、ヘリに積む機器の開発も加速しそうです」と石岡さんは説明した。

「規制緩和か」。章司が経済産業省を訪ねると、航空機武器宇宙産業課の担当者が、「今春、無人機の製造許可が必要ない範囲を、離陸時の重量で100キロ未満から150キロ未満に引き上げる規制緩和を予定しています」と説明した。

もともとこの規制は自衛隊が射撃訓練で使う「空飛ぶ標的」の品質管理を目的にできたもの。当時まだなかった農業用無人ヘリには、思わぬ足かせになっていたらしい。

逆に「飛ばすための規制」は緩和ではなく整備が課題。「現行法は人が乗って操縦する航空機を想定しているため、小型の無人機については規制がほとんどない」(国土交通省)ためだ。国際機関で議論が始まったところだが、日本の事情も反映した国内ルールが整備されれば、開発や活用が加速しそうだ。

「無人機の技術は今後も進化していくのかな」。章司は、慶応義塾大学教授の小林慶一郎さんに、経済と技術の関係について聞いてみた。小林さんは、「経済学の世界では"DTC理論"が注目されています」と説明した。

高齢化で高まる無人機の開発機運

DTC(Directed Technical Change)とは、「方向付けられた技術変化」という意味。一般的な経済学では、技術進歩は経済や社会の状況と関係なく、偶然の発明などで決まると想定していた。

これに対し、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のダロン・アセモグル教授は1990年代末から、「技術はその社会で豊富な生産資源を重点的に使い、希少な資源を節約する方向に変化が進む」とする説を唱えている。企業経営者にとっては、貴重で割高な資源や生産手段を使うより、なるべく手に入りやすく安価な資源や生産手段を利用した方が有利だからだ。

「アセモグル教授は、19世紀には英国に比べ土地が豊富で労働力が貴重だった米国で機械化が進んだと指摘しています」と小林さん。日本では高齢化で、働ける人口の比率が急速に減っている。

章司は、「農業でも若い働き手をあまり使わない方向に技術開発が向かっている。日本では農業以外の分野でも無人機の開発や活用が進むかもしれないな」と思った。

章司が事務所に戻って「将来、無人機を使って部屋にいながら参考人の話を聞けるかもしれません」と報告すると所長がぽつり。「便利だな。そのときは操縦も君じゃなくてロボットかもしれんが」

(松林薫)

[日経プラスワン2014年2月8日付]

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