日経サイエンス  2012年9月号

特集:ヒッグス粒子

 万物に質量を与える素粒子,ヒッグス粒子とみられる新粒子が2012年7月,発見され,世界的ニュースとなった。巨大加速器を用いたヒッグス粒子の探索は30年以上にわたって続けられ,そして今回,世界最強の加速器LHCによって発見が成し遂げられた。LHCは山手線規模のサイズの巨大加速器で,実験には1万人近い研究者や技術者が参加している。

 歴史的に見れば,物理学者はまず宇宙初期に万物には質量が存在しなかったことを見いだした。そこを出発点に,万物に質量を与えるにはどうすればよいか考え,多くの物理学者の研究が組み合わさって,複雑精緻なメカニズムが構築された。「ヒッグス粒子」はそのメカニズムの象徴的存在といえる。

 日本人物理学者も大きな貢献をしている。質量を与えるメカニズムの根本である「対称性の自発的破れ」は南部陽一郎博士が提唱した。LHCの加速器や実験装置には日本の高度な産業技術が数多く用いられており,実験でも日本は中心メンバー国の1つになっている。

 ただ,これで素粒子物理学が完結するということではまったくない。それどころか今回の新粒子の発見は素粒子物理学の革命が始まる幕開けだ。LHC実験が進めば,新たな驚きがもたらされる可能性もある。

 

 

最強加速器で発見  中島林彦/協力:浅井祥仁

質量とは何か  中島林彦/協力:浅井祥仁

南部陽一郎が語る対称性の破れとヒッグス  南部陽一郎 

小林・益川両氏が語るヒッグス後  語り手:小林誠/益川敏英

 

 

「特集:ヒッグス粒子」をもっと知るには

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

質量ヒッグスCERN標準モデルLHCATLASCMS超対称性