人気アニメ「ルパン三世」の次元大介役などで知られる、声優の小林清志(こばやし・きよし)さんが7月30日午前7時6分、肺炎のため亡くなった。89歳だった。所属事務所の東京俳優生活協同組合(俳協)が8日、発表した。通夜、葬儀は故人の意向で近親者のみで営んだ。後日お別れの会を開く予定。

関係者によると、小林さんは健康状態に問題はなく、仕事も普通に行っていたが都内の自宅で容体が急変。家族に見守られながら穏やかに息を引き取ったという。08年の番組立ち上げからナレーションを担当し、先月21日にシーズン39がスタートしたファミリー劇場「AKB48 ネ申テレビ」の収録を同月上旬に行ったのが最後の仕事となった。

小林さんは日大卒業後、舞台俳優として活動する傍ら得意の英語を生かして海外戯曲の翻訳もした。海外ドラマの日本語版を制作していた東北新社から翻訳の仕事を頼まれた中で、誘われて吹き替えの仕事を始めた。62年放送の米ドラマ「ジス・マン・ドーソン」では翻訳と主演を兼任した。

その後、声優に軸足を移すと、69年に運命の役どころと巡り合った。モンキー・パンチさんの漫画「ルパン三世」をアニメ化するため、テレビ局に売り込むパイロットフィルムで早撃ちの名手・次元を演じた。アニメは71年に日本テレビ系で放送がスタートしたが、同じ役で起用されたのは小林さんだけ。昨年10月の「PART6」で大塚明夫に交代するまで50年演じた。

降板の際のコメントでは、「ルパンは俺にとって一生ものの仕事であった。命をかけてきた。わがままを言えば90歳までやっていたかった」と語った。一方で「一部の方々から言われることがあるのは、次元は歳をとった、聞きづらい。当たり前だ。齢(よわい)88歳であるぞ。これからは、そう言われることを気にしないですむ」と複雑な心中ものぞかせた。次元に成り代わり「ルパン。俺はそろそろずらかるぜ。あばよ」と口にした言葉のように、小林さんは、そっと旅立った。

◆小林清志(こばやし・きよし)1933年(昭8)1月11日、東京都生まれ。日大芸術学部演劇科に進学。同期には宍戸錠さんやケーシー高峰さんがいた。卒業後、53年に国民文化研究所を経て劇団泉座に入り舞台俳優として活動。60年に俳協創立に参加。「妖怪人間ベム」のベム役、「機動戦士ガンダム 0083 STARDUST MEMORY」のエギーユ・デラーズ役などのアニメのほか米俳優ジェームズ・コバーン、リー・マービン、トミー・リー・ジョーンズの吹き替えなど多数。